2018 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波合成開口レーダによる森林構造解析と熱帯の鳥類多様性との連関の検証
Project/Area Number |
18K11626
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
小林 祥子 玉川大学, 農学部, 准教授 (10537103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 素子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携研究員 (50456828)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロ波 / 植林地 / 下層植生 / 生物多様性 / 森林 / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、マイクロ波衛星による熱帯森林構造の評価手法の確立と、森林構造を説明するマイクロ波偏波パラメータと鳥類群集の連関を明らかにすることを目的として、研究を行なっている。 本研究対象地の一つであるインドネシアのユーカリ産業植林地では、下層植生の管理が不可欠で、年に一度草刈りや除草剤による雑草管理が実施されている。しかし、下層植生は、複雑な森林構造を提供する役割を担っており、先行研究(Fujita et al., 2016)は、植林地内の下層植生が森林のマルチレイヤー構造を提供し、人工林地内における生物の生息地として機能していると報告した。 そこで本年度は、Lバンドマイクロ波衛星画像を用いた下層植生密度の推定を目的として研究を行った。インドネシアのユーカリ産業植林地での実地調査を2018年9月(雨季)と2019年3月(乾季)に実施した(鳥類調査は9月のみ)。実地調査では、ポイントセンサス法による鳥類調査に加え、森林構造調査(樹高、植生被度)、地表面の水分量調査(下層植生、土壌)を行なった。マイクロ波衛星(ALOS-2/PALSAR-2衛星)データ:Lバンド合成開口レーダデータと実地調査データを解析した結果、ユーカリ林地の下層植生被度と、HH偏波とHV偏波の偏波比(HH/HV)に正の相関が示された。さらに、除草剤散布による林床植生内の水分量低下が、HH偏波とHV偏波において著しく低い後方散乱強度を生じさせていることも示唆された。 鳥類調査においては、統計的妥当性を得るために十分なサンプル数が必要なため、今後さらに調査解析を行うこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールド調査、衛星画像解析も概ね予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までのフィールド調査を通じて、以下の点が明らかになってきた。 ・2015年に起きた大規模な森林火災により、特に植林地に残されていた自然林の森林構造が大きく変化し、その影響が鳥類の観測個体数に顕著に現れており、また森林火災からの森林の回復度合いが鳥類多様性にも影響を与えている可能性が示唆された。 →そこで、森林火災と鳥類多様性の関係性を明らかにするため、2007-2008年の鳥類調査結果と2018-2019年の鳥類調査の結果を比較するとともに、その周辺環境(火災の度合い、土地利用変化)との関連性を明らかにする。 ・ユーカリ林においては、ユーカリの樹高が10 m以上の林班では、下層植生密度と後方散乱強度に相関があることが示された。しかし、主に下層管理が必要とされる24ヶ月(樹高10 m)未満の林班では、下層植生密度と後方散乱強度の間の関係性が明確にならなかった。 →そこで、今後は、波長の異なるCバンド(波長5 cm)とLバンド(波長23 cm)マイクロ波衛星を用いて、幼樹段階におけるユーカリ植林地の下層植生密度の推定を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度も衛星画像解析、ならびにインドネシアにおけるフィールド調査を行なったが、それらの解析結果を元に、調査項目を再考し、2019年度以降におけるフィールド調査を十分に実施する方が研究の効率が上がると考えたため、予算を取っておくことにした。 今年度の調査解析結果をもとに調査項目を議論した上で、来年度以降において乾季と雨季の2回に分け植生調査、ならびに鳥類調査を行うこととする。
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