2018 Fiscal Year Research-status Report
A Feedback of arctic wildfire change on global warming
Project/Area Number |
18K11628
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
串田 圭司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (90291236)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 原野・森林火災 / 地球温暖化 / 北方森林 |
Outline of Annual Research Achievements |
米国アラスカ州において、1950年から2017年までの日ごとの原野・森林火災による燃焼地図を用いて、森林の樹齢ごとの存在確率分布がどのように変化しているか見積もった。2001年と2010年の植生区分図を用いて、常緑針葉樹、落葉広葉樹、灌木などの植生区分ごとや、地域ごとの燃焼確率や樹齢ごとの存在確率の変化の特徴を見た。その結果、平均火災周期は、1950年から2000年までは220年であったのに対して、2001年から2017年までは100年であった。近年大きく火災の頻度が増加していた。 アラスカの地上部現存量は、一般に樹齢150年ごろまで増加する。土壌有機層の有機物量は、火災を受けなければ、さらに長期にわたり増加し続ける。樹齢が100年以下の森林が増え、地上部現存量や土壌有機物量が減少した。火災の強度と頻度の増加は、土壌表層の未分解の落葉落枝やコケを多く含む有機層の厚さを薄くする。有機層は、有機炭素を蓄えるだけでなく、 夏の高温が地中に伝わるのを抑制する断熱層として働く。土壌が高温になると有機物分解が促進されるので、有機層厚さの減少は、有機層とその下の鉱質土層の有機物分解を通じて、二酸化炭素放出を進める。 アラスカにおける近年の火災レジームの変化により、アラスカ森林では、地上部と有機層は1.8 kgC/m2、鉱質土層では1.0 kgC/m2の炭素を失うと見積もられた。このことはアラスカ全体で1.1PgCの二酸化炭素放出を意味し、IPCC第5次評価報告書 (2013)で見積もられた10年間の泥炭火災による二酸化炭素放出量に匹敵する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北方域の陸域生態系の火災の頻度の増加は、植生や土壌有機層が十分回復しない内に火災を受けるようになることを意味する。燃焼時の二酸化炭素放出と植生や土壌有機層の回復による二酸化炭素吸収と土壌有機物分解量とを合わせて評価するという本研究での二酸化炭素放出の定量化は独創的である。次期のIPCC報告書と温暖化緩和策、温暖化適応策に貢献する。加えて、原野・森林火災による永久凍土の夏期融解層の厚さの増加やアルベドといった火災の引き起こす複合的な変化も考慮し、温暖化に関係する放射強制力を見積もる点で大きな意義を持つ。 近年のアラスカの原野・森林火災増加に伴う燃焼時の二酸化炭素放出と植生や土壌有機層の回復による二酸化炭素吸収と土壌有機物分解量とを合わせて評価した。本研究の主要な部分を進展することができた。今後は、原野・森林火災による永久凍土の夏期融解層の厚さの増加やアルベドといった火災の引き起こす複合的な変化も考慮し、温暖化に関係する放射強制力を見積もる。
|
Strategy for Future Research Activity |
アラスカの原野・森林火災後の永久凍土の夏期融解層の厚さの増加とアルベド変化を合わせて、1950年~2017年の原野・森林火災の増加が、土壌有機物・地上部の焼失量と土壌有機物分解量とアルベドと放射強制力に及ぼす影響を評価する。気象要素と火災、土壌有機物分解量の関係を考慮して、温暖化シナリオ下での対象地域の2100年までの土壌・植生から大気への二酸化炭素の放出量と放射強制力の変化を見積もる。
|
Causes of Carryover |
消耗品が想定より安く買えたため、400円の次年度使用額が生じた。消耗品費に充てる予定である。
|