2020 Fiscal Year Research-status Report
A Feedback of arctic wildfire change on global warming
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18K11628
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
串田 圭司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (90291236)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原野・森林火災 / 地球温暖化 / 北方森林 |
Outline of Annual Research Achievements |
アラスカの1950年から2017年までの原野・森林火災の増加が、土壌有機物および地上部の焼失量と土壌有機物分解量と短波長放射の反射率であるアルベドに及ぼす影響を評価した。これらの影響とこれまでの研究成果とを合わせて、アラスカの1950年から2017年までの原野・森林火災の増加が、放射強制力に及ぼす影響を評価した。放射強制力は地球温暖化を進める強さを意味する。土壌有機物分解モデル、地上部現存量、リターフォール量とその変化の地理的分布から、樹齢ごとに、地上植生炭素蓄積量及び土壌中の有機炭素蓄積量を求めた。土壌有機物分解モデルは、深度ごとの温度、土層ごとの土壌有機物含量、土層ごとの土壌有機物分解速度、土層ごとの熱伝導率などのパラメータから成る。原野・森林の火災後の永久凍土の夏期融解層の厚さの増加は土壌有機物分解を促進した。地上部現存量とリターフォール量の地理的分布は衛星画像MODISの解析により見積もった。若齢林では断熱層の働きをする土壌有機層が薄く、夏季の高温が土壌中深くに伝わりやすい。このため、若齢林は老齢林に比べて、年間を通じての土壌有機物分解量が大きかった。樹齢だけでなく植生種による土壌有機物の焼失量、蓄積量の違いも加味した。火災時の土壌有機物の焼失量、火災後の土壌有機炭素蓄積量と火災時の地上部の焼失量、火災後のアルベド変化とを合わせて、1950年から2017年までの原野・森林火災の増加が、生態系の二酸化炭素収支、アルベド、放射強制力それぞれの変化に及ぼす影響を評価した。これらの知見から、温暖化シナリオ下で2100年までの地上部現存量、リターフォール量の変化と火災による燃焼量の変化を見積もった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北方域の陸域生態系の火災の頻度の増加は、植生や土壌有機層が十分回復しない内に火災を受けるようになることを意味する。燃焼時の二酸化炭素放出と植生や土壌有機層の回復による二酸化炭素吸収と土壌有機物分解量とを合わせて評価するという本研究での二酸化炭素放出の定量化は独創的である。次期のIPCC報告 書と温暖化緩和策、温暖化適応策に貢献する。加えて、原野・森林火災による永久凍土の夏期融解層の厚さの増加やアルベドといった火災の引き起こす複合的な変化も考慮し、温暖化に関係する放射強制力を見積もる点で大きな意義を持つ。1950年から2017年までのアラスカの原野・森林火災増加に伴う燃焼時の二酸化炭素放出と植生や土壌有機層の回復による二酸化炭素吸収と土壌有機物分解量とを合わせて評価した。原野・森林火災による永久凍土の夏期融解層の厚さの増加やアルベドといった 火災の引き起こす複合的な変化も考慮し、温暖化に関係する放射強制力を見積もった。温暖化シナリオ下で2100年までの地上部現存量、リターフォール量の変化と火災による燃焼量の変化を見積もった。本研究の主要な部分を進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アラスカにおいて、気象要素と火災、土壌有機物分解量の関係を考慮して、温暖化シナリオ下での2100年までの土壌・植生から大気への二酸化炭素の放出量と放射強制力の変化を見積もる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大のため、海外調査と国際学会での発表が実施できなかった。次年度は、研究の取りまとめと成果発表に関する物品費とその他費としての使用を計画している。
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