2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K11636
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
眞壁 明子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム, 特任技術副主任 (90752618)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横川 太一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 研究員 (00402751)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アンモニア酸化古細菌 / 安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海洋におけるアンモニア酸化古細菌(AOA)の基質選択性の要因を明らかにし、新たな窒素・炭素循環モデルを構築することを目的としている。そのために、安定同位体標識及び安定同位体天然存在度を用いて、課題①~③としてAOA純粋培養実験と、課題④~⑤として天然試料の培養実験を実施する計画である。 2018年度は、課題①~③のAOA純粋培養実験を最適に行うために、菱刈鉱山から採取されたAOAの集積培地を用いて培養試験を行い、基質濃度と消費速度の関係を調べ、安定同位体分析が可能な培地容量・基質濃度・培養時間等の培養条件の検討を行った。 また、課題④~⑤の天然試料の培養実験を実施するために、2018年度に北太平洋において実施された調査航海に乗船し、ニスキン採水器を用いて海水を表層から深層に渡って数深度で採取し、安定同位体天然存在度解析のための試料採取、及び安定同位体標識物質を添加した培養実験を実施した。また、同航海においては、海水よりもAOAの存在量が多いことが近年明らかになった海底マンガン鉱床からもマンガンクラスト試料を採取し、安定同位体標識物質を添加した培養実験を実施した。採取した試料については、栄養塩の濃度分析、及びNO2-,NO3-の安定同位体比分析を進めた。採取した海水の深度によってアンモニア酸化活性の大きさに違いがあり、また、アンモニアと尿素を基質とした場合でもアンモニア酸化活性の大きさに違いがあることが明らかになってきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、安定同位体標識及び安定同位体天然存在度を用いた、アンモニア酸化古細菌(AOA)の純粋培養実験(課題①~③)と、天然試料の培養実験(課題④~⑤)から成り立っており、その両者において実験を進めることができた。 AOA純粋培養実験(課題①~③)については、AOAは増殖速度が遅く純粋培養が難しいことが知られており、培養のための条件検討を十分に行うことが重要である。そのため、課題①~③を実施するための試験培養に時間を費やしたが、最適な条件を決定することができた。 天然試料の培養実験(課題④~⑤)については、調査航海に参加し、実験を遂行することができた。海水採水を主目的とした調査航海ではなかったため、試料量に限りがあり、実験項目は限定されたが、海水だけでではなくマンガンクラストを用いた実験も行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、安定同位体標識及び安定同位体天然存在度を用いた、アンモニア酸化古細菌(AOA)の純粋培養実験(課題①~③)と、天然試料の培養実験(課題④~⑤)から成り立っている。 AOA純粋培養実験(課題①~③)については、2018年度に比較的培養しやすいAOAの集積培地を用いて培養条件の検討を行うことができたので、2019年度は、その培養条件を参考に単離菌株の純粋培養の培養を始めるとともに、AOAの集積培地を用いて課題①の安定同位体標識物質を用いた培養実験を進める予定である。 天然試料の培養実験(課題④~⑤)については、2019年度にも北太平洋において調査航海が実施される予定であり、乗船して海水試料を採取する予定である。2018年度の航海では採水量が限られていたため、2018年度での実験を補完する形で実験を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
2018年度においては、既存の実験器具と安価な試薬で行うことができる培養実験の条件検討に重点的に時間を費やした。高額な安定同位体標識試薬等を用いた実験については2019年度に実施する予定であるため、物品費を繰り越した。 2018年度においては、調査航海に乗船する予定であったため、旅費を計上していたが、他用務で乗船した調査航海において試料を採取したため、本研究での旅費の支出が必要ではなくなった。2018年度に乗船した航海での補填分の試料採取を2019年度の調査航海に乗船して実施する予定であるため、旅費を繰り越した。 2018年度に、アンモニア酸化古細菌(AOA)の単離菌株を海外から輸送する費用を計上していたが、海洋研究開発機構で保持しているAOAの集積培地を用いた実験から先に始めたため、単離菌株については、2019年度に入手する計画に変更し、その他(輸送費)を繰り越した。
|