2020 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射が精子受精能に与える影響:インフラマソーム機構との関連性
Project/Area Number |
18K11637
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
渡部 浩之 帯広畜産大学, 畜産学部, 講師 (90608621)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 放射線 / 精子 / DNA損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎仔期および新生仔期に放射線照射を受けた個体から回収された精子のDNA損傷度をコメットアッセイにより定量した。生後4日目(昨年度実施済み)・生後11日目に2 Gyのガンマ線を急照射した群、および妊娠14.5-19.5日・生後2-7日・生後9-14日にガンマ線を2 Gyとなるまで緩照射した群のDNA損傷度を非照射対照群と比較した。DNA損傷の指標として、Tail Length、% Tail DNAおよびTail Momentを使用した。Tail Lengthは、各放射線照射群で非照射対照群の3.0-3.9倍の値となった。% Tail DNAは、各放射線照射群で非照射対照群の2.0-2.6倍の値となった。Tail Momentは、各放射線照射群で非照射対照群の5.3-6.9倍の値となった。線量率・照射時期に関わらず、胎仔期および新生仔期に放射線照射を受けた個体から回収された精子にはDNA損傷が蓄積されていることが疑われた。 放射線照射後に起きる炎症が今回検出された精子DNA損傷へ及ぼす影響を明らかにするために、精子をリポ多糖(1-10 μg/ml)で処理した後、DNA損傷度をコメットアッセイにより定量した。Tail Lengthは非照射対照群の1.1-1.2倍、% Tail DNAは非照射対照群の0.9-1.0倍、Tail Momentは非照射対照群の1.0倍の値となった。 放射線照射後の個体から回収した精子を用いて作出した体外受精卵の染色体異常率は、これまでの検討で調べられている。一方で、体外受精では侵入する精子は自然に選抜されるため、染色体異常率が過小評価される恐れがある。そこで顕微授精によって作出された受精卵の染色体分析を行った。生後4日目に2 Gyのガンマ線を急照射した群では、構造的染色体異常率が5%となり、通常の体外受精で見られた染色体異常率と同程度であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成体雄マウスへリポ多糖を投与することで炎症を誘起して、精子形成・精子DNA損傷・受精能の検討も行う予定であったが、顕微授精後の精子染色体分析の実験を並行して行うことにしたため、これらの実験を完遂することができなかった。しかし、サンプリングは全て終了しており、解析も100%ではないが進んでいるため、「順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
新生仔へのリポ多糖投与による炎症誘起に挑戦し、その後の精子形成・精子DNA損傷・受精能の検討を行う。また得られた結果によっては、抗炎症剤や一酸化窒素合成酵素阻害剤の投与を行い、その後、同様の解析を行う。 顕微授精後の染色体分析の実験を継続し、全ての放射線照射群で行う。
|