2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K11662
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
永吉 晴奈 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主任研究員 (70516757)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 塩素化PAHs / DNA損傷 / 食品汚染 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩素化多環芳香族炭化水素類(塩素化PAHs)は塩素を含む食品の加熱や大気中のPAHsが同じく大気中の塩素と反応することにより生じる物質である。塩素化PAHsもPAHsと同様にアリルハイドロカーボン受容体を活性化し、DNA損傷を引き起こす可能性があると懸念されているが、ヒトへの最も主要な曝露経路である食品中の存在量や毒性メカニズムなどを対象とした研究はこれまでされてこなかった。本研究は、塩素化PAHsのヒトへの曝露量を評価するとともに、ヒト体内での酸化的代謝とそれに伴って引き起こされるDNA損傷性に注目して、塩素化PAHsのヒトへのリスクについて基礎的な知見を提供することを目的としている。 平成30年度は、塩素化PAHsのGC-MS/MSによる分析法を検討し、主要な19種類のPAHsを一斉分析できることを確認した。また、食品中の塩素化PAHs分析法について文献検索を行い、対象となる食品や調理法を確定した。 塩素化PAHsの毒性については、代表的塩素化PAHsである1-クロロピレンおよびその代謝物を対象として、酵母の細胞死の観察ととDNA変異の修復機能を失った大腸菌と野生型大腸菌による生存試験を実施した。大腸菌による試験では変異型と野生型で大きく生存率は変化せず、顕著なDNA損傷性は認められなかったが、酵母においては3種類ある1-クロロピレン代謝物のいずれにおいても、酵母の細胞死が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は食品の塩素化PAHs量の測定まで終了する予定であったが、調理による消長など考慮すべきファクターが多く存在したため、研究計画の立案に時間がかかっている。ある程度の見通しは立ったので、次年度以降進捗を早めて計画を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
食品、特に塩素化PAHsを生じやすいと考えられている魚の塩蔵品や燻製などを焦点に塩素化PAHsの食品中存在量および一日摂取量を明らかにする。また、近年自家製の燻製等が流行していることから、調理による塩素化PAHsの生成についても検討する予定である。 塩素化PAHsの毒性については、酵母で細胞死が見られたことから、酵母を対象として細胞が死滅する原因をDNA損傷の生成や、その他細胞死を引き起こす遺伝子の発現の有無などを対象に評価する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度において研究の進捗が遅れており、予定していた標準品や食品の購入などの支出がなかったことによって次年度使用額が生じた。次年度に当該年度に購入予定であった標準品とGC分析消耗品を次年度計画と併せて執行予定である。
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