2019 Fiscal Year Research-status Report
検出阻害を克服する新たな環境DNA分析法:阻害要因を加味した生物量推定式の構築
Project/Area Number |
18K11678
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
片野 泉 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (90414995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 裕子 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (40305694)
土居 秀幸 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (80608505)
高原 輝彦 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (10536048)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | POM / PIM / TP / TN / DOC / クロロフィル / 細菌数 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,環境DNAによる生物分布調査を社会に実装するため必須となる,野外における環境DNA検出阻害を加味した生物量推定式の作成を最終目標としている。私達はこれまで,有機物の多い水でも清冽すぎる水でも阻害が発生することをつきとめてきており,本研究では主に水質と有機物に勾配をかけた実験と野外調査を行う予定にしている。 研究初年度となる2018年度に出産・育児休暇による研究中断があり,2019年10月から研究を再開した。2019年10月から2020年3月までの主な実績として,中断前に行った検証実験の取りまとめ,eDNA推定量の補正式作成,論文・学会発表などがある。検証実験では国内の様々な環境(北方湿原,アオコの発生した汚濁水域,富栄養水域など)から採水した水サンプルを用いて,ゼブラフィッシュを飼育し,検出されるeDNA量を測定, 比較を行った。水質項目として,水温,EC,pH,懸濁態(SS)の有機物量・無機物量,全窒素量(TN),全リン量(TP),クロロフィル量(Chl.a,Pico-chl.a),全有機物炭素量(TOC),細菌数を測定し,検出されたゼブラフィッシュeDNA量との相関を各水質項目間で比較した。その結果,特定の水質項目とeDNA検出量に相関がみられ,特にSS有機物,Chl.a量(植物プランクトン量),栄養塩(TP,TOC)がeDNAの阻害要因となることが確認された.さらに,場合によっては粒径が0.8~1.2microm程度の微小植物プランクトン(Pico-chl.a)やSS無機物が阻害要因となることも示唆された。これらのデータを用いて,試料水中の水質項目による阻害の影響を考慮したeDNA推定量を求める式を作成した。自然環境下においてeDNA採水と同時に水質を測定することで,水質要因による阻害を加味したeDNA量を推定できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,初年度に実験を行い,阻害を起こす水質要因を抽出する予定であった。出産・育児休暇による中断があり,2020年3月で実質の初年度が終了したことになるが,水質要因の抽出という当初の目的を果たした上,粗くはあるが推定式を作成することもできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,さらに野外の水サンプルを使った検証数を増やし,より正確な推定式の確立を目指す予定である。さらに,スパイク実験のデータおよび検証する生物群も増やして検証を行っていく。
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Causes of Carryover |
初年度に出産・育児休暇による研究中断があったため,予算執行が変則的になり予定通りに進まなかった。今後,さらなる実験・野外調査を行う際に,消耗品・旅費等で適正に執行する予定である。
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