2018 Fiscal Year Research-status Report
Selective adsorption and resource recovery of harmful anion from natural source using ternary mixed hydrous oxides.
Project/Area Number |
18K11695
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
桑原 智之 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (10397854)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ホウ酸 / フッ化物イオン / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,地下水や温泉水に由来する低濃度有害陰イオンである砒素・ふっ素・ほう素の吸着剤を開発し,資源回収も含めた有害イオン除去システムを構築することである。特に,多価金属の含水酸化物を複合化した三元素系複合含水酸化物(TMHOs)を対象に,ヒ酸,亜ヒ酸,フッ化物イオン,ホウ酸に対する選択性を向上させた吸着剤を開発し,構造特性と吸着特性を評価する。 2018年度は,ケイ素(Si)・アルミニウム(Al)・マグネシウム(Mg)の元素組成比が1:1:8であるTMHOs(SAM118)のホウ酸吸着選択性を向上させるため,吸着剤へのホウ酸の鋳型形成について検討した。SAM118合成の際に添加するほう酸の量を変化させた結果,ほう酸無添加に比べて最大1.5倍程度にホウ酸吸着量が向上した(吸着試験におけるホウ酸の初期濃度は5.0 mmol/L)。このとき,フッ化物イオンの吸着量の減少は認められなかったことから,フッ化物イオン吸着量を維持させつつ,ホウ酸の吸着量を増加させることができた。なお,ホウ酸吸着量が増加するほう酸の添加量には最適量があり,多すぎても少なすぎてもホウ酸の吸着量は減少する傾向が示された。しかし,ホウ酸の鋳型はXRDからは確認することができなかったことから,鋳型形成を伴わないにもかかわらずホウ酸吸着量が増加した要因について今後検討が必要である。 また,TMHOsを造粒するため,文献を参考に樹脂系の材料へのSAM118の担持を試みた。その結果,多孔性の造粒物としてポリアクリルアミドクライオゲルへ担持が可能であることが示された。今後,バッチ試験による吸着試験を経て,カラム試験を実施する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホウ酸に対する選択性の向上について,鋳型の形成については今後の検討に余地があるが,吸着量を向上できたことは前向きな結果であると評価できる。研究当初の予定通り,鋳型の形成による吸着選択性の向上について検討を継続するが,吸着量が向上したSAM118についてホウ酸とフッ化物イオンの吸着が競合しないことが確認できた場合は,ホウ酸の選択性が向上できたと判断できることから,鋳型形成の検討は今年度で目処をつける予定である。 また,これまでTHMOsを造粒するための良好な担持材料が見いだせなかったが,文献を参考にSAM118の担持・造粒に成功した。これにより,カラムを用いた連続通水試験を行うための条件がそろったことから,カラム試験によりホウ酸とフッ化物イオンの吸着の競合について検討するなど,次年度の研究に進展が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,バッチ法とカラム法を併用して,SAM118のホウ酸とフッ化物イオンの選択性を検討する。さらに同様な手法により,Si,鉄(Fe),Mgにより合成されるSFM試料の亜ヒ酸,ヒ酸,リン酸の選択性を検討し,吸着サイトの競合の有無を明らかにする。また,カラム法による吸着能力評価が順調に進んだ場合は,実際の地下水や温泉水を原水として用いること,カラム法での吸着能力の再生条件の検討,脱着液に含まれるフッ化物イオンの再資源化に取り組む予定である。 具体的には,造粒体SAM118の吸着能力をバッチ法により検討し,造粒による吸着能力の低下の程度を明らかにする。これに先立ち,造粒体SAM118に担持されたSAM118の量を明らかにするための化学分析を実施する必要がある。SFM試料については,あらかじめ造粒を行う必要がある。過去に試みた担持剤では,SAMとSFMでは担持の条件が異なったことから,慎重に担持方法を検討する必要がある。またカラム方による吸着試験では,はじめに単独イオンによる評価を行い,次いで複数イオンを混合させた条件で評価を実施する。通水期間が長すぎず,かつ吸着サイトの競合が確認できる濃度条件について留意する必要がある。カラム法による吸着・再生の繰り返しでは,フッ化物イオンの回収を目標とすることから,脱離液の濃度が回収に見合う濃度にまで上昇するかについて留意する必要がある。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,予定していた学生アルバイト(謝金)が自らの研究で忙しく本研究に協力できなかったこと,学会発表および論文投稿が予定以下であったことからである。また,物品費については予定以上に消耗品費が多くなり,予定していたイオンクロマトグラフィー用分析カラムの購入ができなかった。次年度は,改めてイオンクロマトグラフィー用分析カラムを購入するため,次年度使用額は物品費として使用する予定である。
|