2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Resource Recovery and Environmental Clean-up System By Highly Active Iron-Oxidizing Bacteria
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18K11696
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹内 文章 岡山大学, 教育学研究科, 非常勤研究員 (90294446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 彰彦 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (10263617)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鉄酸化細菌 / 高活性株 / 資源回収 / 環境浄化 / 生化学的解析 / 電気培養 / シュベルトマナイト / 固定化利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄酸化細菌は,バクテリアリーチング及びバイオレメディエーション等に活用できる応用微生物学的にも非常に重要な細菌である。これまで自然界から単離している菌株で,銅の溶出活性,水銀気化活性が高い株についての関連酵素等の生化学的諸性質を明確にしてきた。さらに鉄酸化細菌は,増殖速度が著しく遅いという問題点があるために,高度活性菌を独自に開発した電気培養法によって高濃度培養が可能な装置を開発した。今後,銅,ニッケル,モリブデン,亜鉛,コバルト,クロム,マンガン等の金属資源の枯渇,非鉄金属の価格の高騰は,避けられなく,低品位の鉱石,都市鉱山等から金属を高効率回収すること,また,環境改善の観点から特に水銀については,火山活動等の自然活動,水銀含有燃料・製品等の使用による排出や途上国による金採掘における水銀使用等の対策が切望されている。我々が取り組んでいる高活性鉄酸化細菌は,排水,地下水,土壌の浄化及びバクテリアリーチングの高効率化が可能であり,総合システムの確立を目指している。 鉄酸化細菌を用いた環境負荷低減型資源回収及び環境浄化システムを構築するうえで,処理後に発生する副産物の利用,処理後の土壌管理における菌体の残留性やpH管理等を含む検討が必要である。ここでは,鉄酸化細菌を利用した処理において生成される水酸化鉄硫酸塩のシュベルトマナイトにも注目して,陰イオン吸着,金属イオン吸着,脱臭等の機能,土壌改良,水質浄化として利用するための固定化及びハンドリング技術,また,芸術・工芸品等の資材としての利用方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で使用する鉄酸化細菌 Acidithiobacillus ferrooxidansは,増殖が遅いために,電気培養装置の改良を重ね,高濃度培養が可能となり,重要な酵素精製及び生化学的な解析が進み,現在は実用化の検討を進めている。 銅リーチング活性,すなわち銅鉱石等に対して銅の溶出が著しく高い A. ferrooxidans D3-2 株は,バクテリアリーチングに活用できる。また,水銀耐性で,無機及び有機水銀から金属水銀として還元気化する高い活性を持つ A. ferrooxidans MON-1 株及びさらにその誘導株A. ferrooxidans FT 株は,水銀を含有する廃液,地下水,土壌の環境浄化に活用できることを確認した。これらの高度活性株と鉄酸化細菌の標準株の A. ferrooxidans ATCC 23270 株の電気培養で得られた洗浄細胞,精製酵素Cytochrome c oxidase 等を用いて,鉄酸化酵素系等に係わる鉄酸化活性,リーチング活性,金属水銀(Hg0)気化活性等の諸性質について比較し,高度活性株は,資源回収及び環境浄化に係わる活性が高いこと等の生化学的諸性質が分かってきた。特に,MON-1 株を用いた水銀汚染土壌浄化の実用化試験では,水銀汚染土壌から金属水銀として常温にいて短時間で効率良く気化回収できることについて紹介した。 さらに,本研究の総合的なシステム化に関連して,含有物組成の観点から農業資材としても利用が認められている柵原旧鉱山において生成される水酸化鉄硫酸塩のシュベルトマナイトについて,様々な物質の吸着能力,脱臭能力等について試験を行っている。また,粒状化等による機能材料としての加工方法について検討を行った。また,多機能を有する様々な資材,芸術・工芸品等の着色剤として具体的な利用方法について試験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
高活性鉄酸化細菌について,さらに高耐性化・高活性化及び活性保持することによって環境負荷低減型資源回収・環境浄化への実用化が課題となる。特に高度水銀耐性株である A. ferrooxidans MON-1 株及びさらに誘導株 A. ferrooxidans FT 株は,水銀を含有する廃液,地下水,土壌中の水銀を金属水銀として気化活性が著しく高いこと等のこれまで得られている基本的データーを解析し,今後はこれらの菌株による気化水銀を安全に吸着トラップする装置及び電気培養装置と微生物固定化装置を組み合わせた総合システムについて検討を行う。また,電気培養システムによる種々の金属に対する高活性株の育種,そのた機能材料の生産技術を提案する。 本菌は,酸性条件下で成育しやすい菌であるが,これまでの基礎実験では,中性及びアルカリ性の水銀汚染土壌においても,電気培養液及びその固定化微生物の使用によって気化活性を得られている。これは,菌体を取り巻く様々な微環境(pH,温度,無機栄養塩等)の影響が考えられるために,固定化微生物法による効率化,阻害の抑制効果,活性の持続性,流動層あるいは固定層としての装置化,鉱山あるいは,土壌,廃水等での好ましい活用条件を調べる。低温時に使用できる誘導株については,育種しており,さらに,中性及びアルカリ性の領域における効率化,土壌等で処理後の管理方法の検討が必要である。また,本株を実際技術として活用するうえでの土壌への残留性の試験等を実施して「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」に基づく浄化事業計画を策定する。 抗廃水処理施設において,鉄酸化細菌を用いた処理によって生成される水酸化鉄硫酸塩のシュベルトマナイトについて,砒素,リン酸,アンモニア等の吸着機能を確認するともに,その資材を機能材料としての固定化及びハンドリング技術について検討する。
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Causes of Carryover |
令和2年度に続き令和3年度のコロナ過において,現場での調査及び試験の実施が困難であったが,本研究の課題は,概ね進捗しており,これまで得られた成果のデーターに趣をおき応用微生物的な解析を行う。処理後の菌体の残留性やpH管理等を含む実用化に向けた検討を進める。 さらに,本研究で得られた成果の運用に関して,微生物利用の総合的な観点から新たな微生物処理に伴う副産物の利用に関する研究を進めており,次年度はこれらの実用化を目指した研究を進展させる。また,高効率培養容器の改良,有能微生物及び浄化等で発生する多機能な副産物を粒体あるいは成形物として固定化物の活用について検討を行う。
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