2018 Fiscal Year Research-status Report
資源循環性向上に資する非構造建材の定量的評価指標構築に関する基礎的研究
Project/Area Number |
18K11706
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清家 剛 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (60236065)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 資源循環性 / 非構造建材 / 実態調査 / 評価指標 / 複合化 / 解体分離性 / 再資源化 / ライフサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、内外装や建具といった建築の非構造部に用いられる建材(以下、非構造建材)を対象としている。これらは建築物の性能の向上を目的として構成材料や接合方法を工夫した高度な複合化が加速している。一方で、高度に複合化された非構造建材が運用後廃棄物となる際には、構成材料の多種多様化・解体分離方法の未確立が主要因となり、再資源化の難しい混合廃棄物として扱わざるを得ないのが現状である。本研究では、そのような多様化する非構造建材の複合化の実態を体系的に捉えるために、資源循環性の観点から個々の非構造建材の使用後の解体分離性・再資源化可能性の実態を明らかにするボトムアップ的アプローチによる、非構造建材の設計指針となり得る資源循環性を軸とした定量的評価指標を構築することを目的とする。 そのために、対象とする住宅用非構造建材を屋根材、外壁材、内壁材、断熱材、窓、扉、床材、天井材などに分類したうえで、3つの調査を行う。調査①では、大手ハウスメーカー・工務店へのヒアリングを行い、建設段階における住宅用非構造建材の使用実態を明らかにする。調査②では、調査①で明らかになった使用実態をもとにした建材メーカーへのヒアリングを行い、構成材料・接合方法等の建材詳細情報、建材の解体分離設計実態、設計時の再資源化可能性に対する認識等を明らかにする。調査③では、調査②で明らかになったデータをもとに、建設廃棄物を取り扱う一般的な設備を有する産業廃棄物処理業者、及び自社内で再資源化を行うハウスメーカーへのヒアリングを行い、現状の処理実態、解体分離時・再資源化時の問題点、建材設計に対する要望等を明らかにする。 以上の調査を踏まえ、非構造建材の複合化実態を体系的に捉える方法としての、再資源化を見据えた建材設計指針となる資源循環性の定量的評価指標を構築する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画としては、非構造建材の建設段階と建材設計製造段階における実態調査及び分析(調査①及び調査②)を進め、その後解体分別段階以降における実態調査及び分析(調査②及び調査③)を行い、最終目的である非構造建材の資源循環性に関する定量的評価指標の構築に取り組む予定である。 現在までの調査としては、研究対象とする非構造建材の種類が多岐にわたっている戸建住宅の内外装材・建具から、広く使用されている12建材を選定した(外装材:ALCパネル/金属サイディング/金属屋根材/窯業系サイディング/化粧スレート、内装材:石膏ボード/複合フローリング/化粧スレート、建具:アルミ樹脂複合サッシ/複層ガラス/合わせガラス/フラッシュドア)。本研究では、建材の資源循環を「建材廃棄後に何らかの再資源化処理を行い、その建材の原料等に再利用すること(水平リサイクル)」と定義し、対象建材の廃棄後における再資源化可能性に加え、建材製造時における再資源化可能性も調査した。非構造建材のライフサイクルにおいて、材料調達・製造・施工(動脈側)を担う製造業者7社、及び解体・中間処理・再資源化(静脈側)を担う産業廃棄物処理業者2社へのヒアリング調査を実施した。これら調査を一通り進めた段階であり、結果の分析を進めているところである。まだ仮の結果ではあるが、非構造建材の資源循環性を決定づける要因として、構成材料・複合方法の可逆性、及び廃材を循環させる回収システムの存在が挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査の分析から、建材製造側の実態として、建材としての製造方法の確認、工場端材などの利用より現時点での再資源化の可能性、現在と今後の複合化の傾向などを把握した。また、廃棄物処理や再資源化を実施する静脈側へのヒアリングからは、一般的な処理の水準より高度な処理の水準によって再資源化の割合が大きく異なることが明らかになりつつある。またこれら現在までの実態調査から、非構造建材の資源循環性を決定づける要因として、構成材料・複合方法の可逆性、及び廃材を循環させる回収システムの存在が挙げられた。 こうした分析結果と仮説を前提としつつ、今後は、ライフサイクル静脈側における処理実態調査をさらに拡大し、上記2要因を評価項目として、非構造建材の資源循環性に関する定量的な評価指標を構築する。具体的には再資源化の条件とそれぞれ起こりえるシナリオなどを構築して、それをもとに建材製造側と廃棄物処理及び再資源化側のヒアリング調査を再度実施して、具体的な評価項目構築の検討を行う予定である。また、これまで実績のある北海道における塩ビサッシのリサイクルシステム構築に関する検討をベースに、そのフィージビリティの要件としての廃棄物の排出量の地域性、再資源化工場との距離といった具体的なフィールドから明らかになってくる条件も加えて、検討を行っていく予定である。
|