2018 Fiscal Year Research-status Report
太陽光パネルの湿式法によるガラス分離と有害金属除去を目的とした高分子抽出剤の開発
Project/Area Number |
18K11722
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Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
岩熊 美奈子 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (00342593)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 太陽光パネル / 溶媒抽出 / 金属抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は太陽光パネルの大量廃棄時代に備え、今後大きな問題となる課題に取り組む。まず第1に、現在困難である湿式によるガラスとCIGS膜の分離を行う。廃棄される太陽光パネルは経年劣化によりガラスのひび割れ、汚れなどが考えられるためまず洗浄を行い、その後にカバーガラスとCIG S膜の分離を行う。カバーガラスとCIGS膜の間には高分子接着剤であるEVAポリマーが塗布されている。この接着剤を溶解もしくは物理的にはがすことができれば、純度の高いガラスとCIGSを得ることができる。また、CIGS膜内のセレンや混入した亜鉛や鉛の分離回収を行う。セレン、亜鉛や鉛は環境汚 染物質であり不法投棄された場合、環境中に溶出することで土壌汚染や水質汚染につながる。ゆえにこれらの有害金属は太陽光パネルが回収された際に取り除くことが必須の金属である 今年度は太陽光パネルのパネル部分に含まれる金属回収に関する研究をはじめに行った。抽出剤を合成し、さらに金属回収の基礎となる抽出実験について検討した。新規に合成した抽出剤を用いて検討したが、対象の金属(インジウム、ガリウム、鉛等)については未検討である。次年度の課題として太陽光パネル内に含まれる有害金属もしくは有価金属に対応した抽出剤の分子設計を行う予定である。 太陽光パネルは何層にも重なる層状態でできており、その層間には接着剤として酢酸系高分子が使用されている。このプロジェクトはこのガラス層を傷をつけずに剥離することも一つの目的であるため、酢酸系の高分子接着剤に溶解する、環境にやさしい剥離剤を見つけることである。剥離実験には酢酸系の酢酸アミルなどの有機溶媒を使用したが、今後は無機系の剥離剤を使用することを試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まずはカバーガラスとCIGS膜の分離を行う必要があるが、カバーガラスと膜の剥離実験を検討し終えていない。カバーガラスとCIGS膜の間には高分子接着剤であるEVAポリマーが塗布されており、接着剤を溶解もしくは物理的にはがすことができれば、純度の高いガラスとCIGSを得ることができる。しかしながら、今年度は環境にやさしい剥離剤の特定に至らず、有機溶媒を使用した。有機系の剥離剤と無機系の剥離剤を交互に使用したところ一定の効果が見られたが、その結果は到底実用的でなかった。現在は環境に多少負荷がかかるが、工程の一部に有機溶媒を使用しEVAポリマーの溶解を行うことはできないと考えている。 また、溶媒抽出剤の開発では、インジウム、ガリウムの抽出には至っておらず、また、環境に問題のあるセレンや亜鉛もまだ対象金属として抽出実験を行っていない。次年度は抽出剤の分子設計から見直しを行い、新規抽出剤の合成を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に溶剤の再検討を行う。環境にやさしい無機酸もしくは無機アルカリを用いることに立ち返り、酸、アルカリ の濃度条件の模索を検討する。次にEVA接着剤部への溶剤浸透の速度を高めるために温度条件と処理できる最大の仕込み量を確定するための条件決定を行う。また、環境にやさしい有機酸なども 検討する。また処理する際の濃度条件決定や処理ができる最大量も実用化に向けて初年度に検討しておく必要がある。EVA接着剤部の引きはがしには湿式処理が理想であるが、ここでは湿式の処理に加えてレーザーリフトオフ装置の使用も検討している。 第二に抽出剤の再設計を行い、抽出剤の物性を知る必要がある。新たな抽出剤である高分子鎖を持つ抽出剤が水相へ溶解しやすいか、界面反応をしやすいかについて検討する。 抽出分離実験を行う。CIGS(銅、インジウム、ガリウム、セレン)膜に含まれるセレンと不純物の亜鉛、鉛が分離できるかについて詳細に検討する。これらの金属は半金属(セレン)や両性金属(亜鉛および鉛)酸やアルカリの条件によって金属は水相内の配位形態によって、その抽出挙動を変えるため、塩を添加することで抽出挙動が大きく変化することが考えられる。そのため、添加塩を変化させた溶液から、抽出選択性の比較を行う。また、選択的に抽出された金属の抽出平衡を求めることで、抽出化学種を特定することができ、高分子型抽出剤がいかにして金属を抽出しているかについての知見を得ることが出来る。
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Causes of Carryover |
該当年度は予備実験が多く、安価な試薬を使用することのみに支出をしたが、次年度以降は試薬等も多く購入する必要があるため。また旅費に関しても初年度ということで学会報告などの機会がなかったため、報告等も次年度以降に持ち越しとなるため。
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