2018 Fiscal Year Research-status Report
中海における海藻類の刈り取りが底生生物群集および藻場生物群集に及ぼす影響
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18K11726
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
倉田 健悟 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (40325246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 憲吏 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (50793915)
伊達 勇介 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80505537)
藤井 貴敏 米子工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (40649216)
須崎 萌実 米子工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (40782074)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自然再生 / 循環型社会 / 海藻 / 底生生物 / 汽水湖 / 中海 / オゴノリ / アサリ |
Outline of Annual Research Achievements |
【オゴノリ類の分布および現存量の把握】2018年9月、12月、2019年3月に江島と大根島の周囲を魚群探知機を使って調査を実施した。次項で測定したオゴノリ類の群落の高さと現存量の変化は、魚群探知機による現存量の経時変化の傾向と整合していた。 【オゴノリ類と底生生物群集のモニタリング】調査を2018-04-23から2018-11-12の間に実施した。試料の処理と分析が一部しか終えていない。2017年は夏から秋にかけてオゴノリ類の現存量は増加したが、2018年においては春から夏にかけて減少し、秋にあまり増加しなかった。処理と分析が終了した試料(2018-04-23)について底生生物群集の解析を行った。2017年の結果と同様に、ホトトギスガイが優占種である場合、多様度指数H'が低かった。2018年4月における底生生物群集の種類数は、2017年の結果より多い傾向が見られた。 【オゴノリ類の存在が底生生物群集に及ぼす影響】本実験は、繁茂したオゴノリ類がアサリの生存と移動へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。オゴノリ類または水流の有無によって底質のORP、pH、アサリの生存率に差異が生じるか野外実験を行った。また、異なる水温条件の下、オゴノリ類の有無によりアサリの移動行動が変化するかを調べる室内実験を行った。野外実験の結果、水流の有無に関わらず、オゴノリ類を入れた区においてORPが低下する傾向があった。室内実験ではアサリの移動行動は見られなかった。 【懸濁堆積物の安定同位体比測定】2017年度に採取したオゴノリ類の藻上の懸濁堆積物(冷凍保存中)の炭素および窒素安定同位体比を測定した。炭素安定同位体比(δ13C ‰ VPDB)の平均値と標準偏差は-17.4±1.4であった。窒素安定同位体比(δ15N ‰ ATM)の平均値と標準偏差は6.4±0.6であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は科研費の前年度より調査を開始し、フィールドにおける地点の特徴や調査方法の修正を重ねてきている。科研費の申請以前よりデータの収集をした上で、申請書に研究計画を記載しているため、全体的な方向性は予定通りの進捗状況と言える。一方で、後述するように、オゴノリ類の現存量の年変動とオゴノリ類の刈り取り操作の困難さが課題であるため、これらに対応した研究手法を取り入れていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの結果を踏まえると課題は大きく分けて2つある。1点目はオゴノリ類の現存量の年変動の大きさである。本研究を開始した2017年(科研費の前年)は、調査地に比較的オゴノリ類の繁茂が見られたが、2018年は2017年と比較してオゴノリ類の現存量が小さかった。最近の中海においてオゴノリ類の刈り取りが始まった2011年以降、刈り取り量から推定される現存量も年によって、また場所によって異なっていた。このような汽水域における生物量の年変動は、比較的普通の状況であるが、その原因は分かっていないこと、そして本研究を進める上で年変動の要因をどのように解析するか注意が必要である。2点目はオゴノリ類の刈り取りの有無によって底生生物への影響を野外実験で検証する際、オゴノリ類の刈り取りの操作を的確かつ妥当に実施できるかどうかという問題がある。2年間ともこの操作が難しく失敗したため、2019年からは屋外にある掛け流し水槽を利用して、オゴノリ類を付加する区とオゴノリ類を付加しない区を設定し、底生生物への影響を検出できるような実験デザインを検討する。
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Causes of Carryover |
備品を購入して金額を入力した際に、少ない金額で入力したため、その差額が今年度の余りとして次年度に繰り越すこととなった。
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Research Products
(2 results)