2019 Fiscal Year Research-status Report
中海における海藻類の刈り取りが底生生物群集および藻場生物群集に及ぼす影響
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18K11726
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
倉田 健悟 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (40325246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 憲吏 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (50793915)
伊達 勇介 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80505537)
藤井 貴敏 米子工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (40649216) [Withdrawn]
須崎 萌実 米子工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (40782074)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 紅藻類 / 汽水湖 / 底生生物群集 / 光量子束密度 / オゴノリ / 藻体色 / 中海 / 生長量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中海においてオゴノリ類の季節的消長を調査するとともに、藻体色の変化について調査を行った。また、室内実験にて藻体色の経時変化や藻体色の違いによる生長量の差異を検討した。以下、本年度の結果をまとめた安永(2020)から主な内容を抜粋する。 5月から12月の調査期間中において中海のオゴノリ類は5月に最も繁茂し、8月に最も衰退することが分かった。また、野外調査の環境データとオゴノリ類の現存量と藻体長のデータより、オゴノリ類の生長の季節変化には光量と水温が、オゴノリ類の生長の垂直分布には光量が重要な役割を果たしていることが示唆された。中海の深場で赤色のオゴノリ類が見られた要因としては、光量が不足し、本来生長に利用する窒素を構造タンパク質やフィコエリスリンなどの色素、硝酸態や遊離アミノ酸として貯蔵している可能性があることが考えられた。また、黄色のオゴノリ類は窒素含有率が一般的な紅藻類よりも低い状態であり、赤色のオゴノリ類に比べ、単位重量あたりの生長に利用できる窒素量が少ない可能性があることが示唆された。本実験で示唆された藻体色の異なるオゴノリ類の特徴をまとめると、黄色のオゴノリ類は水温、光量ともに生長に適した環境で見られ、そのような環境では窒素を盛んに生長に利用するため、今回のように単位重量あたりの窒素含有率が少ない結果となったと考えられる。一方で赤色のオゴノリ類は深場や高水温時に見られ、現存量としては小さいが、窒素含有率は高いことが明らかとなった。これらのことから、窒素含有率の高い赤色のオゴノリ類が採取の容易な浅場に生育する7月以降が藻刈りに適した時期であると言える。また、効率の良い栄養塩除去の観点から見ても、黄色のオゴノリ類よりも赤色のオゴノリ類を刈り取る方が望ましい。しかし、年や地点によって生育環境が異なる可能性があるため、藻体色を観察しながら刈取り時期を調整するとよい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は予備調査として2017年度から中海の江島付近においてオゴノリ類の現存量などのデータを収集してきた。3年目にあたる2019年度までの同じ水域におけるデータを得ることができたため、それらを比較することにより当水域のオゴノリ類の現存量の年変動について検討できる見通しが立った。2年目の2018年度には屋外水槽を使ったオゴノリ類とアサリの実験において、オゴノリ類があった場合は堆積物の酸化還元電位が低下することが確認された。また、オゴノリ類の現存量と環境要因の関係に加えて、堆積物、オゴノリ類を生息場所とする生物群集に関しては、概ねスケジュール通りにデータまたは試料を得ることができた。2019年度は前述したように、野外調査と室内実験を組み合わせて当水域におけるオゴノリ類の現存量の変化と環境条件の対応を明らかにできたと考えている。しかし、これまでに収集されたデータを統一的に整理し、要素間の関係を解析する作業を進めることができていないこと、2017~2018年度に採集したオゴノリ生物群集の試料の処理は60%程度の進捗状況であることから、全体としての進捗状況は当初の予定から若干遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は科研費による研究計画の最終年度であるため、基本的にはこれまでのデータを整理してまとめる作業が中心になると想定している。当初は、2017年度から数えて4年目の中海のオゴノリ類の現存量の変化についても追加のデータとして調査する予定であったが、COVID-19に係る緊急事態宣言が発せられたため、野外調査と室内実験を例年と同じように行うことが困難になった。そこで、夏季に集中的な野外調査を行ってデータを取る方向に計画を変更した。具体的には、船上から垂下した水中カメラによるオゴノリ類の被度の計測、スキューバダイバーによる方形区を用いたオゴノリ類の採集、船上のスミスマッキンタイヤ型採泥器によるオゴノリ類の採取、の3種類の方法でオゴノリ類の現存量を測定し、これらの方法間の差異や相関を解析する。この結果を得られれば、今後、スキューバダイビングによる採集に頼らずに船上からオゴノリ類の現存量を測定もしくは推定することが可能になり、調査水域におけるオゴノリ類の分布や季節変化に関してより多くのデータを取ることができるようになると考えられる。また、前述したオゴノリ生物群集の試料の処理を完了することに努めたい。
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Research Products
(3 results)