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2018 Fiscal Year Research-status Report

定常経済への移行と生活世界の変容:科学と物語の統合による全貌と詳細の解明

Research Project

Project/Area Number 18K11751
Research InstitutionUniversity of Yamanashi

Principal Investigator

金 基成  山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70345700)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords定常経済 / 生活世界 / 持続可能な発展 / 持続可能な社会 / 環境政治 / 環境言説 / エコロジー / 政治変動
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は定常経済に関する科学的言説およびユートピア的言説を相互補完的に読解することを通して、定常経済への移行に伴う生活世界の変容について明らかにすることである。一般的に、定常経済とは資源・エネルギーの処理量が地球扶養力を超えない一定の水準に維持され、その中で生活の質の改善が絶えず行われる経済であるとされている。その一方で、定常経済への移行とそれに伴う生活世界の変容についてはほとんど解明されていない。そこで本研究は、科学と物語の統合を通して、定常経済への移行と生活世界の変容の全貌と詳細を明らかにすることを目指している。
平成30年度の研究においては、1970年代以来の「成長の限界」に関する社会科学分野の論議,そして地球扶養力の限界およびその影響に関する自然科学および社会科学分野の研究成果を検討し、定常経済への移行の必要性と実現可能性に関する科学的言説の特徴を体系的に把握・整理した。とりわけ、ハーマン・E・デイリーの Beyond Growth: The Economics of Sustainable Development、D・H・メドウズらの The Limits to Growthおよびその後続研究 Limits to Growth: The 30-Year Update、そして、J・ロックストロムらによる地球許容範囲に関する自然科学分野の主張とその論拠について検討した。このような研究を通して、定常経済という言説の重要な構成要素、すなわち地球扶養力、最適規模、配分の効率性、分配の正義、倫理的経済などの主要概念を中心に定常経済に関する科学的言説のストーリーラインを同定することができた。これは、定常経済における生活世界の様相を解明する上で重要な手掛かりを提供するものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

まず、文献調査としては、エコロジーに関する社会科学分野の文献の検討を通じて、定常経済の定義、基本原理、主要政策に関する論点整理が行われた。研究成果の一部は日本ESD(持続可能な発展のための教育)学会研究大会(2018年8月17日-19日、奈良教育大学)で発表後投稿(「持続可能な発展に関する異なる解釈」)され、同学会の学術誌『ESD研究』第2号に掲載される予定である。本研究者はこの論文で、持続可能な発展の意味の形骸化を防ぐためには持続可能な発展という概念の多義性に関する教育、とりわけ定常経済論を含む急進的環境言説に関する教育が必要である、と主張した。また、「定常経済論が描いている社会のあり方」と「今日における標準的な改革論」の類似性と相違性を比較する研究も進められ、その研究成果の一部は前述のESD学会2019年度研究大会(2019年8月19日-20日、宮城教育大学)で報告される予定である。
その他、定常経済とその生活世界の解明に役に立つ隣接学問分野の研究および方法論について把握するための調査活動も行われた。たとえば、2018年6月30日に大阪経済法科大学アジア太平洋研究センターで開かれた社会運動論研究会のシンポジウムでは、Facebookユーザに着目して社会運動に参加している人々の実際の生活世界を描き出そうとする研究成果が発表され、本研究課題における定常経済下の生活世界の様相を解明する上で活用できる方法論的着想が得られた。他の例として、2018年6月23日に明治学院大学白金キャンパスで開かれた環境三学会合同シンポジウムが挙げられる。このシンポジウムではSDGs時代の社会デザインに関して政治学、経済学、社会学、法律学からの報告がなされ、定常経済への移行、すなわち地球または地域の生命扶養力の限界に経済を適応させることの難しさと日本の実態について多くの着想が得られた。

Strategy for Future Research Activity

今後、研究活動の重点は定常経済への移行およびそれによってもたらされる生活世界の変容の解明に移される。具体的に、今後の研究活動は、エコロジー的ユートピア論に分類できる文学作品および政治・社会思想の中で高く評価されている作品を対象に、その中に描かれている定常経済的な生活世界の手掛かりを見つけ出す作業を中心に行われる。とりわけ、エコロジー的未来社会に関する卓越した作品として政治思想的にも文学作品としても注目されているA・カレンバックの小説 Ecotopia: The Notebooks and Reports of William Weston および Ecotopia Emerging を初め、W・モリス(Morris)のエコ社会主義的な小説 News from Nowhere、そして、U・ル・グィンのエコフェミニズム小説 The Dispossessed、その他、M・ブクチンの Remaking Society: Pathways to a Green Future や R・エッカースレイの Environmentalism and Political Theory: Toward on Ecocentric Approach のような文献が検討される。以上のような研究は、本研究課題の最終的な到達点、すなわち定常経済への移行と生活世界の変容に関する蓋然性の高いシナリオの構築、そして,このようにして構築されたシナリオを一つの準拠点としつつ定常経済の実現およびその実践に向けた現実世界の萌芽的試みを同定する研究につながるものである。

Causes of Carryover

本研究課題における支出項目は文献購入と旅費支出からなっているが、図書購入の際の見積額に僅かな差額が生じたため、次年度使用額(2,465円)が発生した。

  • Research Products

    (1 results)

All 2018

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] Sustainable Developmentにおける意味の競合とそのESDへの示唆2018

    • Author(s)
      金 基成
    • Organizer
      日本ESD学会

URL: 

Published: 2019-12-27  

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