2019 Fiscal Year Research-status Report
International comprison of conservation and utilization on depletable regional resources
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18K11752
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加賀爪 優 京都大学, 学術情報メディアセンター, 研究員 (20101248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鬼木 俊次 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 社会科学領域, 主任研究員 (60289345)
衣笠 智子 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (70324902)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロスペクト理論 / 退耕還林 / 生態移民 / コモンズの悲劇 / PSM手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
①昨年度はアファール州でも首都アジスアベバに近いアヲッシュ地域で現地調査を実施したが、2019年度はアジスアベバから北西500kmで同じアファール州の州都であるセメラ地域で現地調査を実施した。昨年度のアヲッシュ地域が国の首都に近いことから農畜産物の流通業の比重が高かったのに比べて、セメラ地域は牧畜中心の比重が高くなるが、以前に調査した北部ティグライ州のメケレに比べると貧困の度合いは深刻である。現地ではセメラ大学の講師をカウンターパートにして、次年度に向けた行動経済学的分析のために必要な牧民ミクロデータ収集のアンケート調査の設計(調査牧民の戸数・組合せと質問項目の体系)を打合せ、そのアンケート調査の大規模な実施を委託した。 ②枯渇性地域共有資源の保全・利用・開発に関する状況を、アフリカ型のエチオピアおよび東アジア型の中国と国際比較するために、南アジア型の代表例として、アセアン地域の後発国であるミャンマーの調査分析を実施した。特にミャンマーの基幹産業部門である米作地域に焦点をあて、その資源利用・開発政策の状況について統計情報を収集して産業構造の変化を分析し、社会経済体制の展開過程の各段階で国際市場との連動性が大きく変化したことを明らかにした。 ミャンマーは2003年に社会主義計画経済から市場経済へと政治体制が移行したが、この点では、エチオピアと類似の体制変換を経験してきた。また、中国も1978の改革開放路線以降、徐々に計画経済に市場制度を導入しつつある。この類似点がこれら対象国における地域共有資源の管理(保全・利用・開発)に及ぼしつつある影響を比較検討することに注目した。また、中国とミャンマーとの経済関係は農産物を中心とする国境貿易の比重が高まっているが、これは中国側からは違法取引とされており、ミャンマーにとって地域資源開発の新たな障壁になりつつある点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年は首都アジスアベバに近いアファール州南部のアワッシュ(Awash)市近郊を選んで現地調査を実施したが、今年度は、アジスアベバから北東に約500kmの農牧地域であるセメラ地域で農牧民調査を実施した。この地域は、アファール州の州都であるが、アワッシュ(Awash)よりも市場経済の浸透度はかなり遅れている。この点に注目して、アワッシュ地域と比較することで、牧畜民の行動に対する市場経済の浸透状況が農牧民の行動に与えるインパクトを調査した。この地域の中央部にセメラ大学があり、そこの講師をカウンターパートに雇い調査の通訳と補佐を依頼した。加えて今後の現地調査についても、調査対象農牧民の選定とその時期や方法を打ち合わせた。同じアファール州セメラ地域でも農牧民集団ごとに牧畜行動には大きな差があり、家畜の出荷に関しても数日かけて徒歩で面識のある遠くの相手市場に出荷する集団がいる一方で、家畜の流通を扱う家畜商組織もあるなど、一様ではないことが分かった。 これまでの調査で対象としてきたアファール州北部アバラ地域の事情に比べて、牛乳を販売することに関する農牧民の抵抗は一律ではなく、かなりの比率で肯定的に受け止めている牧民もいることが分かった。また、家畜や牛乳を出荷する市場は、必ずしも地理的に最も近い地域の市場とは限らず、やや遠くても何等かの血縁関係や取引実績のある地域へ出荷し続ける傾向もみられた。この点はアバラ地域よりもアヲッシュ地域の事情にやや類似していることが見て取れる。これらは、この地域は首都のアジスアベバ市との地理的関係において、北部アバラ地域と南部アヲッシュ地域の中間的な位置にあることを反映しているものと思われる。 このように、これまでの異なる調査地域ごとの傾向に一定の傾向が読み取れつつあることから、本研究は、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(2020)の現状では、新型コロナウイルスの世界的蔓延があり、エチオピアでの現地調査を昨年同様に実施できるかどうか未確定であるが、最終年はもともとの予算が少ないが昨年度の研究基金の一部を今年度に持ち越した資金を動員して実施することを想定している。大規模な現地調査は望めないが、当該地域を対象とした既存の調査研究の帰結との比較検証を通じて、本研究の客観的信頼性を高めるよう分析結果を改良する。 当初の研究役割分担に従って、鬼木が主に東アフリカの帰結を導き、衣笠が日本を中心に分析結果をまとめる。加賀爪が中国と隣国ミャンマーの事例を加えて、全体的意義を導出する。そのためには、ミクロデータの収集が不可欠となるが、農牧民のアンケート調査に対する根強い抵抗が予想以上に強く非協力的なため困難に直面している。 農牧民への現地調査によるミクロデータ収集を効率的に実施するために、アファール州北部(ティグライとアバラ)での農村調査研究については、メケレ大学のメラク准教授を調査研究補佐、Ibklav Negash助手を通訳として雇い、またアファール州南部(アヲシュ市)では、エチオピア農業畜産資源研究所研究員Weldegabrieal G.Areaawi博士を調査研究補佐とて雇用し、メケレ大学のIbklav Negash助手を通訳兼調査補佐として現地調査研究体制を組織化して、さらに、アファール州北東部のセメラ地域の農牧民調査研究に関しては、セメラ大学講師のSirage Mohammed氏をカウンターパートとして雇用して、今年度以降の調査研究を進める。
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Causes of Carryover |
年度末に複数回の海外現地調査を計画していたが、新型コロナウイルスの世界的蔓延により、海外現地調査と現地研究協力者とのアンケート調査やインタビュー実施が困難な状況になったため、研究助成基金の一部の使用を次年度に繰り越す必要が生じた。最終年度は元々の予算が少なかったが、これと合算して海外現地調査を拡充して実施する計画である。
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Research Products
(17 results)