2018 Fiscal Year Research-status Report
中小企業の経営課題解決と環境経営を両立させるメカニズムに基づく支援策のデザイン
Project/Area Number |
18K11764
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
在間 敬子 京都産業大学, 経営学部, 教授 (70349182)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 環境経営 / 中小企業 / 経営課題解決 / 環境学習シミュレーション / エージェントベースシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
中小企業への環境経営普及は重要な環境政策課題の一つであるが、様々な経営課題に直面する中小企業は、環境経営の認識や位置づけが低いことも多い。本研究の目的は、事業や経営で高評価を得ている中小企業を対象として、課題解決の方法・プロセス・内容を明らかにし、それらと環境経営をリンクする要素を抽出し、環境経営の取り組みが遅れている「アウトリーチ層」に対する環境経営促進策を設計することである。本研究の特徴は、研究代表者が開発した環境学習シミュレーションを活用する実践的研究、および、エージェントベースシミュレーションを用いたシナリオ分析による促進策の検討である。 平成30年度は次の3つの基礎的な調査と分析を行った。第1に、前身の研究課題で実施した中小企業への「経営課題」「環境課題」「環境活動と経営改善の結びつき」「外部支援」の各認識の調査データを用いて、中小企業のタイプ分析を行った。その結果、事業・経営関心型、マイナス回答型、環境経営関心型、プラス回答型に分類された。第2に、環境学習シミュレーションの手法を確立し、中小企業で実践するに先立ち、大学で実践し効果を確認した。参加者はアルバイトでの作業に潜む食品廃棄物等の環境負荷について認識でき、参加者間のコミュニケーションツールとしての可能性も示唆された。第3に、環境経営の状況についてインタビュー調査を行った。本研究で主対象とする食品関連産業として、カゴメ、アレフ(ビックリドンキー運営会社)、ノースカラーズ、日進乳業に、環境経営の状況についてヒアリング調査を行った。食品産業では食品廃棄や廃水の課題があり、効果的な排水処理シンクを開発した大都技研にもヒアリングした。また、従来から対象とする機械・金属・精密の分野では、島津製作所、日新電機、三共精機にヒアリングした。これらのヒアリングから、大企業でも環境活動は停滞していたことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では環境経営の「アウトリーチ層」について経営改善を主とした環境経営推進策を見いだすことを目的としている。研究対象としては、従来から研究している機械・金属・精密関連事業に加えて、環境対策面で、より遅れている食品関連産業も取り上げている。平成30年度は、新たな調査対象の食品関連産業における環境経営の現状を把握するため、基礎的なヒアリング調査を実施した。そのため、アウトリーチ層へのヒアリングの開始が遅くなった。また、調査の過程で、環境学習ツールの実践について、協力してくれる中小企業を得るには、さらなる手法の開発と効果の提示が必要であることがわかった。それを踏まえて、平成30年度は、環境学習手法の確立に力点をおき、中小企業での実践に先立ち、大学生を対象として環境学習シミュレーションを試行した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)は、以下の3つの研究を行う。第1に、事業や経営で高評価を得る中小企業を選定し、経営課題解決のプロセス、支援の利用に関してヒアリングを行い、環境経営と結びつく要素を抽出する。第2に、食品産業のサプライチェーンについて、エージェントベースモデリングにより、資源利用から食品廃棄についてシミュレーション分析を行い、環境経営の促進策を検討する。第3に、環境学習シミュレーションの手法を企業において実践できるように改良し、協力企業を開拓し、効果を検討する。これらにより、環境経営の取り組みが遅れている企業に対する促進策の可能性を探る。
|
Research Products
(4 results)