2018 Fiscal Year Research-status Report
Reconsideration of the Basque Language Revival under the Francoist Regime - from the Transnational Viewpoint -
Project/Area Number |
18K11774
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
萩尾 生 東京外国語大学, 特命事項担当室, 教授 (10508419)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バスク語 / 少数言語 / 通信教育 / 言語復権 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度には、研究課題に係る基礎資料を収集する目的で、スペイン領バスク地方を2度訪問し、以下の成果を得た。 まずは、2018年11月に、ビルバオ市のバスク語アカデミーとドノスティア=サン・セバスティアン市のHABE《成人向けバスク語識字化・話者再育成化協会》を訪問し、以前より交渉してきた、EP盤レコードとカセットテープに収められていたバスク語音声データのディジタル化を実現させた。音声データを入手するとともに、その利用の許可を得たことは、最大の収穫であった。しかも、データのディジタル化と公開には普遍的価値があるということで、一連の作業を無償で提供してもらうことができた。データについては現在分析中であるが、少なくとも今日普及している共通バスク語とは距離を置く立場の資料であることが明らかになった。 その後、2019年3月に、上記音声データを作成した民間企業の創業家を訪問し、現在同企業のCEOを務める創業者の孫に直接インタヴューする機会を得た。上記音声データを作成したのが半世紀以上前のことであり、そのデータを利用した事業からは既に撤退しているため、過去の各種資料は大半が処分されていた。それでも僅かながら、貴重な一次資料を入手することができ、フランコ体制下において、国境を越えたバスク語通信教育事業が展開されていたことが、改めて確認された。 さらにまた、同企業の当時の事業を実際に見聞きしたことのあるバスク語音声学者の回想と意見を、断片的ながらも聞き出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したとおり、本研究課題にとって不可欠な音声データをディジタル化して入手できたことは、なによりの収穫であった。 また、同音声データを作成した企業の創業家と直接コンタクトがとれたことも、本研究課題にとって、同じく喜ばしいことであった。しかし、バスク語通信教育事業から撤退した同企業に、過去の受講生に関する資料がほとんど残っていなかったことは、ある程度予想できたこととはいえ、今後過去の受講生とのコンタクトを図るうえでの困難さを予期させるものである。 以上より、現段階での進捗状況は、「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、以下の3つに焦点を絞って、研究を継続していく。 まずは、初年度に入手した音声データの分析を継続するとともに、音声教材の特徴と、それが作成された時代背景との関連を浮き彫りにする。 次に、スペインにおける通信教育制度の歴史を法的観点から精査するために、アルカラ市の教育行政公文書館とサラマンカ大学公文書館を訪問し、史資料の入手と分析を行う。 そして最後に、バスク語通信教育の受講者ならび関係者との接触を図るべく、2019年10月にビルバオ市で開催される「世界バスク系コミュニティ会議」に出席し、世界に散らばるバスク系同胞団体に対して、協力を依頼する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、実施計画段階で計上していた「アナログ音声資料のディジタル化に係る経費」と「聴き取り調査相手に対する謝金」の2つが、ともに関係者の厚意により無償となったことによる。 次年度に実施する予定の現地調査が、当初計画よりも訪問地の数が増える見込みであるため、その旅費に今年度の余剰金額を充当させることとしたい。
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