2023 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsideration of the Basque Language Revival under the Francoist Regime - from the Transnational Viewpoint -
Project/Area Number |
18K11774
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
萩尾 生 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 教授 (10508419)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バスク語 / 少数言語 / 通信教育 / 通信講座 / 遠隔教育 / 言語復権 / フランコ体制 / ディアスポラ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画を3度延長して臨んだこの最終年度には、南北アメリカ大陸でフランコ体制下にバスク語通信教育を受講した者の証言や資料を得るために、2023年12月にスペインのバスク州で開催された「第8回世界バスク系コミュニティ会議」(別途招待)に参加した後、在外バスク系同胞に対する聴取を行ったが、思わしい結果を得ることはできなかった。しかしこの機に、当地のバスク語アカデミー文書室において、これまで収集してきた史資料を補完するいくつかの書簡や草稿を新たに見つけることができた。本研究は、所期の成果を十分に得られたとは言い難いが、得られた知見をもとに英文論文の草稿を準備するところまでこぎ着け、研究期間終了後になるが、国際誌への投稿を予定している。 研究期間全体を通じて得られた主な知見は、以下のとおり。(1)フランコ体制(1939年-1975年)の後期、スペイン国家の統一性や一体性を損なうことのないかぎりにおいて、スペイン国内の民族的/地域的な言語文化活動は、一定程度の「自由」を享受することができた。(2)1955年の政令により制度化された民間の通信教育は、1970年に至るまでの間、公教育制度を補完するものとして位置づけられていた。(3)1960年に民間企業の発意で始まったバスク語通信教育は、当時としては最先端の言語教育方法理論と視聴覚技術を駆使した教材を導入していた。(4)受講者の中には、南北アメリカ大陸の在外バスク系同胞も確認された。(5)にもかかわらず、これらの方法理論と技術は、ポスト・フランコ体制で普及していくバスク語教育に大きな影響を与えることがなかった。最大の要因は、この通信教育が、1960年代後半から顕著になるバスク語の正書法策定の動きに対応できなかったところにある。
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