2018 Fiscal Year Research-status Report
紛争がもたらす国民形成とその変容プロセスの包括的研究――イラクを事例に
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18K11778
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山尾 大 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (80598706)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イラク / 国民形成 / 世論調査 / 紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ポスト紛争期のイラクにおいて、国家への信頼性の欠如と強いナショナリズムが共存する要因の解明を通して、国民形成のプロセスを包括的に明らかにすることを目指している。 そのために、①国家建設の頓挫と信頼喪失のプロセス、②国民統合政策の変化、③トランスナショナルなアクターとネットワークの役割の3点を順に明らかにする作業をおこなっている。 本研究では、地域研究(質的調査)と世論調査の計量分析(量的調査)を組み合わせることで、複合的に問題の本質を明らかにする手法をとっている。 これによって、紛争を契機に、既存の国家とは必ずしも一致しない国家観に基づいた多様なベクトルを持つナショナル・アイデンティティが構築されていく国民形成のプロセスを、包括的に浮き彫りにする。 2018年度には、イラク国内の新聞・雑誌、新たに発見された旧体制の刊行物から国民統合政策の変化を分析した。それに加え、旧体制が国民統合のために用いた多様なモニュメントや博物館、シンボルが、新体制下でどのように利用されているのかという問題を、主として報道に着目して明らかにした。さらに、特に軍や警察、官僚などの国家の機構に対する信頼がどのように失われていったのか、世論調査と新聞報道の整理を通した汚職実態の把握を通して明らかにした。それに加え、この「新家産型体制」がどのように機能不全に陥ったのか、その要因を解明した。資料は、官報に加え、申請者が15年前からデータベース化している現地の諸日刊紙を利用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点で計画していたことについては、全て順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、イラク国内で世論調査を実施する予定である。政党支持に加え、政治や国家に対する信頼度を問う質問を中心に行う予定である。 それに加え、国民統合のシンボルについての調査も開始する。
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Causes of Carryover |
物品費を抑えることができたため、当初の計画よりも少ない予算で研究が可能となった。翌年度に繰り越す研究費については、世論調査の実施を予定しているため、サンプル数の拡大などに有効活用する計画である。
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Research Products
(13 results)