2023 Fiscal Year Annual Research Report
China's State-led Development and Politics of Buddhism in Nepal-Himalaya Region
Project/Area Number |
18K11786
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
別所 裕介 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (40585650)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | チベット仏教 / 仏教外交 / 一帯一路 / 国境開発 / 仏教再編運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度ではひと月半に及ぶ集約的フィールド調査を遂行することができた。調査前半は北インドのチベット人居住区において資料収集と臨地調査を行い、後半ではカトマンドゥおよび周辺地域で現地研究者らと意見交換を進めた。また冬季には12月と2月の2回、北インドに渡航し、現地調査を継続した。 以上のような継続的なフィールド調査を通じ、現代南アジアに対して中国の「一帯一路」政策が及ぼしている社会・経済的な影響力を、ヒマラヤ国境線の南側の生活社会において捕捉するための体系的視座を得ることができた。特に今年度の現地調査は、コロナによるフィールド調査の途絶期間を除き4年に及んだ本研究の全体像を明確にするうえで最終的な意義を持つものとなった。その具体的な内容は以下の2点に集約される。 1)「陸のシルクロード」が持つ持続可能性の検討:ネパールとその隣接諸地域(インド北部のヒマ―チャル州とシッキム州)を対象として、ヒマラヤ南面の同緯度地帯で起こっている社会変化を比較の視点から検討した。具体的には、ヒマラヤ国境地帯における中国資本が絡む経済開発と、それに伴う在地仏教徒のアイデンティティ・ポリティクスを地域社会内の相互作用として読み解く視点を提起した。この成果は、現状のヒマラヤ南面の諸国家の中で唯一積極的に中国への全面開放を進めているネパールと、反対に国境の排他的管理を強めているインド、という2つの対照的な国家主義の狭間で、「仏教外交」への対処を個別に進めていく土着仏教徒の側の自立性を検証していく上で不可欠である。 2)研究成果の公表:以上の成果は、2022年7月の「宗教と社会」学会大会において、パネルとして組織化された形で提示された。その成果は翌年には学会誌のセッション記録として公刊されている。また、研究の途中経過を合計3回の国際学会、ならびに5回の国内研究会を通じて広く社会に発信することができた。
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