2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of the Communication Network of the Multiethnic Solidarity Society in Riace in Southern Italy
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18K11788
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中挾 知延子 東洋大学, 国際観光学部, 教授 (70255024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏崎 梢 東洋大学, 国際学部, 助教 (40735594)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多文化共生社会 / 社会ネットワーク分析 / リアーチェ / 南イタリア / 多言語社会 / ソーシャルキャピタル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、2018年度より行ってきたリアーチェの住民へのアンケート調査およびインタビューを継続して実施すると同時に、リアーチェ周辺のイオニア海沿いに散在するコムーネ(イタリアにおける地方自治体の単位)の現地視察、2018年度に収集したデータを分析して多文化共生社会についての研究論文を発表した。 アンケートについては、2019年5月から9月にかけて113件実施した。インタビューについては、9月に現地調査を行った際に5人の住民に各30分~1時間の長さで行った。リア―チェは2018年10月に町長の交替という大きな変化があり、そのことによって共生社会の様相が日増しに変化している。定住に向かっていた移民の流出によって、ここ20年間で築いてきた共生社会における住民間の相互性や双方向性が異なってきている状況を把握することができた。社会ネットワーク分析に関しては、2018年度に集めた264件を基にリアーチェの社会ネットワークを多言語状況やソーシャルキャピタルの観点から分析することで、多言語社会が進めばソーシャルキャピタルは悪化していくという主張は必ずしもいえないのではないかという、共生社会での1つの問いに有効な答えを示せたと考える。 また、リアーチェに隣接するカミーニというコムーネは、リアーチェから始まった共生社会のしくみである「リアーチェモデル」を踏襲して移民を積極的に受け入れ、連帯ツーリズムによって多文化共生社会がうまくいっている。連帯ツーリズムはリアーチェでも以前から提案されていたことではあるが、観察した限りではうまくいっていない状況から、カミーニにおいて移民定住を推進するNGOにインタビューを行い、リアーチェと比較してその原因についての考察を論文発表する準備を進めている。連帯ツーリズムだけが多文化共生社会をうまくまわすしくみではないが、1つの有力な方策であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
社会ネットワーク分析の1次データとなるアンケート調査については、知り合いを通じてリアーチェの近くのコムーネに住むイタリア人の方に依頼することができ、5月から9月でリアーチェとその周辺地域で113件のデータを得ることができた。年間300から500件という計画当初の目標には及ばないものの、得られた個々のデータは回答欄には丁寧に答えていただいており、ネットワーク分析データとして、特に相互性を見る項目は、リアーチェが周辺コムーネ(一部を除く)と比べて著しく相互性が大きいという知見を得ることができている。2019年の後半については、11月半ばからイタリア人の同じ方に依頼して現在継続してもらっているところである。なお、2018年度から累積すると、377件のアンケートデータを得ており、2019年9月までの1年半で600件として(年間400件)、目標データ件数の約63%を集めていることになる。 2019年9月と2020年3月にリアーチェとその近隣地域における現地調査を計画していた。9月の調査では、リアーチェの住民5人に長めのインタビューを行った。インタビューを通じてリア―チェの現状を把握することができた。社会ネットワーク分析結果の考察に取り入れていく。2020年3月には、研究分担者も同行して、今までインタビューをしていなかったリアーチェの海岸沿いにあるマリーナ地区においてリアーチェの現状や住民の意見などをヒアリングする予定であったが、新型コロナウィルスの影響で渡航を延期したため行っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年2月からの新型コロナウィルスの全世界的な蔓延により、目下イタリアへは大学から渡航禁止の指示が出ており、今後の状況を注視して、2020年度のリアーチェへの現地調査の可否を見極めていく。現地でのアンケート調査については、依頼しているイタリア人の方がどの程度まで自由に周辺地域を行き来できるのか見えていない状況であり、現在連絡が途絶えており、状況が分かり次第残りのアンケート調査をどのようにするのか決める予定である。 現在のイタリアおよび全世界の情勢に鑑み、2020年度は文献調査や集めたデータの範囲での社会ネットワーク分析と考察を継続して行い、研究成果を論文としてまとめて発表していく。また、2020年度は最終年度であるが、ウィルスの蔓延という不測の事態になり、アンケート調査や現地調査が当初の計画通り行えないのではないかという危惧から、研究期間の延長も検討している。リアーチェや周辺コムーネの住民で仲良くなった人々との交信はオンラインで続けていく。
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Causes of Carryover |
2020年3月に予定していた研究代表者ならびに研究分担者の2名によるリアーチェとその近隣地域での現地調査を延期した。新型コロナウィルスの蔓延により、イタリアへの渡航が大学から禁止になったためである。情勢を見守るとともに、渡航が可能になり次第、3月に行う予定であった現地調査を実施する計画である。
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