2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of the Communication Network of the Multiethnic Solidarity Society in Riace in Southern Italy
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18K11788
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中挾 知延子 東洋大学, 国際観光学部, 教授 (70255024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏崎 梢 東洋大学, 国際学部, 非常勤講師 (40735594)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多文化共生社会 / 社会ネットワーク / 多文化コミュニケーション / 南イタリア / 連帯ツーリズム / 移民 / リアーチェ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、南イタリアの共同体(村)リアーチェを中心に、その周辺の村々で繰り広げられている多文化共生社会の実態を調査分析している。コロナ禍の前までは、アフリカや中東から多くの移民(難民も含む)が往来していた南イタリアにおいては、多くの土地で何らかのトラブルを起こして共生がうまく進んでいなかった。そんな中で調査対象のリアーチェは、ルカーノ首長の強力なリーダーシップのもとで際立つまでに順調な共生社会を展開させていた。しかしながら、そのリアーチェでも、調査を進める中で潜在的な歪みが潜んでいることが分かった。当初ルカーノ首長が目指していた方策の一つに、連帯ツーリズムの推進があった。連帯ツーリズムとは、共生社会を進めるためのボランティアが土地を訪れ、地元住民・移民・共生推進団体と協力して連帯を深め、社会貢献活動を行うツーリズムである。一方、隣接する村カミーニでは、予想を上回るほど連帯ツーリズムがうまく機能していることが分かり、リアーチェとカミーニでどのような要因が連帯ツーリズムの成功に起因しているのかについて、社会ネットワーク理論を適用することで分析した。分析から、社会ネットワークにおける地元住民とそのほかの関与する人々との人間関係が、ツーリズムの成功にかなり作用することが現時点で分かった。迎え入れる住民と、迎えられる移民との良い関係が、共生社会の成功を左右するととられがちであるが、まわりの関与する人々が成功の秘訣を握っていると考察される。連帯ツーリズムのメカニズムについてもさらに改善していく余地があると分かってきた。平和な地球とは名ばかりの混迷する21世紀において、連帯ツーリズムを日本にも適用することは、共生社会のひとつの視座を与えると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年の春に予定していたリアーチェとその周辺の現地調査が、コロナ禍で実施できなくなって以来、住民へのインタビューができない状況になっている。SNSを利用して何とか現地の様子を調べているが、村々の移動が依然制限されていることで、近隣で調査に協力してもらっているイタリア人の方々も活動ができない状況にあったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
現地での調査が再開でき次第、リアーチェとその周辺に赴き、聴き取り調査を続ける予定である。リアーチェでは、2019年3月、多文化共生を進めてきたルカーノ首長が退いてから現在まで計3人の首長が交替をしており、現在共生社会の様相が変容していると推察される。現地調査では、村の様子を視察するとともに、住民や首長への聴き取りを行う。さらに、近隣の村々、特にカミーニを訪れて、連帯ツーリズムの状況を調べることにする。また、社会ネットワーク分析に加えて、分析を推進させるいくつかの手法も取り入れ、多文化共生社会における持続可能な地域活性化手法の提案を行っていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、現地調査が不可能になり、当初の予定通り執行できず、2021年度に延長申請、2022年度に引き続き延長申請をしているため。 使用計画としては、リアーチェとその周辺地域における現地調査の出張費用と、成果発表のための学会への参加費を予定している。
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Research Products
(1 results)