2019 Fiscal Year Research-status Report
大災害後の社会におけるネパール女性のノンフォーマル教育活動の質的探求
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18K11790
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
長岡 智寿子 田園調布学園大学, 人間科学部, 准教授 (20738273)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 成人教育 / ノンフォーマル教育 / 識字教育 / 社会参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2015年4月25日にカトマンドゥ盆地を中心に発生した大地震後の社会において、生活の再建を目指して人々が取り組んできた数々の実践の中で、女性たちの社会参画の状況に着目し、その質的な状況分析を目的とするものである。 主要調査地としてLalitpur郡,Bungmati村 Koincha地区に暮らす女性たちの行動に焦点を据えるものであるが、その背景には、以前に研究代表者が同地区にて識字教室を実施したことから、震災後の生活の中で学習活動がどのように展開されてきたのか、質的に探究していくことが学習の効果を把握するという側面の他、何よりも人々の生活経験を将来に向けて「記録」するという観点からも意義あるものと考えている。 具体的には、Lalitpur郡を拠点に活動するコミュニティラジオRadio SagarmathaFMと共同で人々のインタビューの記録をまとめ、「Bungmati Awaji」という放送番組を制作し、実施した。取材の過程で明らかになったことは、大震災から約5年を経た現在、Bungmati村の状況はさらに悲惨な状態になってしまっていることである。 その理由は、①タライ地域からカトマンドゥ盆地まで幹線道路を建設することが決定され、村落の多くの土地が国に没収されてしまったこと。②村落内に複数のレンガ工場が建設され、日々、黒煙が煙突から流れ出る状況が続き、空気汚染により肺を患う人々が増していること。③土地を持たない村落の人々は震災以降、仮設住居の暮らしが継続しており、心身共に健康被害が深刻さを増していること、である。そのため、現地の研究協力者の協力を得て村人らと意見交換会を開催し、地域行政官らに早急に支援策を見直すことの他、現在の生活環境の改善に向けて強く訴える機会を設け、コミュニティラジオ放送の番組としも放送することで現状を広く伝えていくこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、訪問調査を中心に現地協力者と共同調査の準備を進めてきた。しかし、2020年2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年3月に予定していた現地への渡航は中止せざるを得ない状況となってしまった。また、ネパールにおいても6月初旬までロックダウンとなり、現地協力者も身動きが取れない状況にある。しかし、予定していた調査等は、現地研究協力者のサポートにより、可能な範囲で情報収集に動いてもらう中で、おおむね順調に進展している。現地の研究協力者とオンライン会議やメール等で適宜、打ち合わせを行いながら研究活動を進めている次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大が収束すれば、調査地への訪問調査も実施することが可能となるが、現時点では予定を立てることが難しい状態である。しかし、以下のような形で、これまでの調査の記録をまとめようと計画している。
・放送実施したラジオ放送番組「Bungmati Awaji 」の記録を音声データをもとに文字化し、小冊子にまとめること。 ・映像資料としても活用できるように、これまでに撮影した映像記録を編集し、公開することを検討する。 ・コミュニティラジオという地域性豊かなローカルメディアが社会開発の貴重な資源となっている。そのことを広く社会に伝えていくことも検討している。英語表記で小冊子にまとめたり、映像に英語の字幕をつけるなどし、広く情報提供を行う中で、得られた知見を共有し、意見交換の材料としても活用できればと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度の訪問調査予定が新型コロナウイルスの感染拡大により渡航が不可能な状況になってしまったた。そのため、現時点は前年度に予定していた研究費が使用できず、繰越となってしまった。 しかし、今年度はこれまでの調査の記録をまとめ、公開していく際の印刷経費や可能な限り調査を実施するための研究費として有効に活用していく計画である。
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