2018 Fiscal Year Research-status Report
The social development study for preventing human trafficking
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18K11791
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
齋藤 百合子 明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (10409815)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脆弱な若者 / 人身取引防止 / 社会開発 / 支援 / 福祉 / 就労 / 政策 / 社会的排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脆弱な若者が人身取引のリスクを回避し、脆弱性を克服し福利(Well-being)を得るための社会開発は何が必要かについて研究している。 初年度は、文献・資料分析および学会や研究会などで関連する課題に対する議論を深めた。具体的な課題とは、次に挙げるものであるが、どれも人身取引の被害に遭いやすい脆弱な若者層(もしくは既に人身取引その他の暴力の被害に遭った若年女性)に焦点を当てている。①開発学において人身取引に関する人間開発・社会開発の再考、②人間の安全保障とジェンダーの再考、③セクシャリティをめぐる議論(売春/セックスワークをめぐる議論の深化、リプロダクティブヘルスの課題など)④社会開発としての福祉社会およびコミュニティ福祉における官民の協力の可能性、である。 各々の課題は、アクター別(国際機構、政府、地方行政、地域社会、NGOなどの中間支援組織、当事者団体、家族や個人)に分析した。とくに救済の概念について、「ビジネスと人権」と人身取引の場合とを比較検討した考察を論文に記した。 また、人間の安全保障とジェンダーの観点から、人身取引被害者支援に関して、支援者側社会のまなざしが被害者=当事者の主体性を客体化しやすい傾向についても、2018年度中に執筆した論文にて考察を記した(発行は2019年度予定)。 さらに、日本における脆弱な若年層への支援アプローチの一事例として、某団体における活動を参与観察しながら、福祉、教育、就労の関連性について考察した。2018年度の考察は、福祉、教育、就労ではとらえきれない課題として、先の3項目に「政策(国別比較を含めて)」と被害回復のための治療や脆弱性のためにさらに社会排除を除去するための取組みが、また脆弱性の発生要因別に社会的排除に向かうプロセスを考慮しながら研究を進める必要があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は研究環境の変化等から、予期しないできごとや体調管理に配慮する時期があり、とくに海外での調査研究は制限されたが、研究課題に関して議論や参与観察などから深めることできた。概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた脆弱な若者層への支援アプローチ「福祉」、「教育」、「就労」に「政策」および「社会的排除の除去」を加えた5項目に関する好事例収集と国別分析を行う。具体的には、2019年6月に開催される移民に関する国際会議の参加(研究発表含む)を通して、アジアだけでなく、他の地域における移民とくに若者に関する「福祉」、「教育」、「就労」に「政策」および「社会的排除の除去」施策に関する情報収集をする。 また、日本をはじめ韓国、タイなどのアジア諸国とアメリカもしくはドイツにおける西洋諸国での若者の主体性を重んじた支援アプローチにはどのような支援もしくは社会的介入(社会開発)が必要か、を問いとし、若者のケイパビリティを伸張しながら教育、福祉、就労面での支援を通して社会に統合していくにはどのような支援が必要なのかを、人身取引被害経験がある人々など当事者グループの活動を日本のJKビジネス等に関与する女子高生世代の若者、米国のランナウェイユース、タイやカンボジアのストリート・チルドレンと呼ばれる若者たちの被害防止のための社会的事業介入アプローチを通して、社会開発の側面から人身取引防止を考察する。 さらに研究成果を発表し、議論を重ねる研究会も開催予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は、研究環境の変化および体調不良のため、予定していた海外出張ができなかった。しかし、次年度は体力も回復したため、海外での国際会議出席兼研究発表(2019年6月カナダ、2019年11月台湾)のほか、韓国、ドイツへの調査も計画している。 さらに人身取引、社会開発をキーワードにしたホームページも作成し、研究成果の公表および社会に対して問題提起をしていく予定である。
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Research Products
(7 results)