2018 Fiscal Year Research-status Report
ニューヨーク市におけるバングラデシュ出身の移民:移民第二世代の生活実態調査
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18K11792
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鈴木 弥生 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (80289751)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バングラデシュ / ニューヨーク市 / アメリカ合衆国 / 移民労働者 / 第一世代 / 第二世代 / 女性 / 貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニューヨーク市に約2週間滞在して、南アジア出身者から形成されるコミュニティでの実態調査のほか、(1) バングラデシュ出身の第一世代の移民労働者から、彼女・彼ら、そしてニューヨーク市で同居している第二世代の子どもたちの実態、(2) 移民第二世代の大学生と大学院生から、学生生活や友人関係、宗教、慣習、言語等について聞き取り調査を行った。 (1) バングラデシュ出身の移民労働者とその家族は、同じ出身国・地域の人たちとコミュニティをつくり、世帯間で出身地域同士の交流や情報の共有を行っている。第一世代の移民労働者の雇用形態は、時間労働や季節労働その他の非正規雇用に限定されている。そのため、保護者は、子どもたちに対して少なくともアメリカのカレッジを卒業するように助言しており、殆どの子どもたちがそれを実現している。自分自身の労働によって現金収入を得ている第二世代の子どもたちは、その一部を保護者に渡している。また、女性・男性を問わず結婚後も家族とのつながりは強く、相互扶助関係は顕著である。 (2) 保護者は第二世代の子どもたちに対しても祈祷をうながし、ベンガル語をも修得させようとしている。子どもたちにとってベンガル語の読み書きは困難であるものの、祈祷は欠かすことがない。しかし「家庭の外で祈祷の場所を探すことは困難であるし、トランプ政権に移行してからは、イスラーム教徒への偏見と差別に満ちた言葉を浴びせられたことがあり、地下鉄内での事件を通して通学に不安を覚えるようになった」と社会環境の悪化に直面している。また、アメリカ合衆国外にルーツを持たない友人と比較してみると、家族との結びつき、帰宅時間、恋愛や結婚に関する保護者の関与、ハラール以外の食事や飲酒が禁忌か否かといった慣習の違いが明確であった。こうした背景から、大学入学後の友人関係は同じ宗教のイスラーム教徒に限られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、バングラデシュからニューヨーク市に移住した移民第二世代の実態に関して、ニューヨーク市への移住が貧困問題の解決や本人および家族構成員のウェルビーイング向上に結びついているのか否かといった視点からそれを明らかにする。また、大多数をイスラーム教徒が占めるバングラデシュ出身の移民第二世代が、アメリカ合衆国の社会構造のなかでどのような課題を抱えているのかについても分析する。そのうえで、国際間における移民政策の課題について提起し、これらの研究成果を国際社会に示すことを目的とする。 本研究助成の初年度にあたる2018年度は、9月2日から15日までニューヨーク市に滞在して、先行研究と資料の収集、コロンビア大学での研究会参加、そして、バングラデシュ出身者から形成されるコミュニティでの実態調査、バングラデシュの第一世代の移民労働者および第二世代からの聞き取り調査を行った。そのほかにも、パキスタン、インド、エジプト出身者からそれぞれ聞き取り調査を行っている。コロンビア大学で開催された研究会や討論会では、ニューヨーク市でイスラーム教徒が抱える課題が浮き彫りになった。現在、先行研究の分析を行うと同時に先に述べたバングラデシュ出身者からの調査内容をまとめている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度同様、ニューヨーク市において、先行研究と資料の収集およびバングラデシュ出身の第一世代および第二世代双方からの聞き取り調査を実施する。また「国際労働移動は二国間の孤立した現象でなく、グローバルな労働の流れの一環として位置づけられる」(森田桐朗編著『国際労働移動と外国人労働者』同文館、1994年25頁)という指摘から、可能であれば、バングラデシュ以外の出身国・地域にも焦点をあてて、先行研究や資料の収集、実態調査を行う。各国・地域での治安悪化が懸念される場合には、適宜調査日程を変更する。これまでの研究成果については、学会誌や学内紀要に適宜投稿する。
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Causes of Carryover |
2018年度の調査旅費において、当初の予定より若干ではあるが滞在日程を縮小したたこと、人件費・謝金に支出しなかったことから、次年度使用額が生じた。2019年度の現地調査に伴い必要となる宿泊費と日当に使用する予定である。また、文献購入を予定している。
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Research Products
(2 results)