2020 Fiscal Year Research-status Report
Nigerian diaspora and secession movement
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18K11794
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
島田 周平 名古屋外国語大学, 世界共生学部, 教授 (90170943)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナイジェリア / ディアスポラ / 分離独立運動 / ビアフラ / 連邦制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナ禍のため現地調査が不可能となり、調査はもっぱら現地新聞や論文等による文献調査が中心となった。ちょうどこの年、国内政治を揺るがす2つの事件が発生し、それらに対するディアスポラの対応に興味深い異なる反応がみられたのでその理由について分析をおこなった。その分析結果は、2019年度の現地調査で明らかになったディアスポラたちの本国政治への関りにみられる限界性、すなわち彼らが掲げる普遍的要求(人権擁護、平和実現、政治の透明性等)の国民への訴求力の弱さと彼らの政治的影響力のローカル性とも関連しているように思われた。 第1の事件は、西部ナイジェリアで起きた自警団創設の動きである。西部5州の州知事は、連邦政府の反対にも拘わらず州内の治安維持のために不可欠だとして西部ナイジェリア安全ネットワーク(WNSN: Western Nigeria Security Network)の創設に踏み切った。これは連邦国家であるナイジェリアにとって連邦政府と州政府との関係性の再定義を迫る動きであった。連邦政府の近代化を目指すディアスポラにとっては、この動きは前近代的な部族主義的分離運動と映り、西部出身ディアスポラと東部の分離独立を主張するビアフラ地元民IPOB(Indigenous People of Biafra)支持者以外、ディアスポラで支持する者は多くなかった。 第2の事件は10月に発生した#EndSARS運動である。これは、悪名高い国家犯罪調査情報局所属の対強盗特殊部隊(Special Anti-Robbery Squad)の廃止を求める大衆運動であった。ディアスポラたちはこの運動には直ちに支持を表明し世界各地で#EndSARS運動を活発に展開した。 この2つの事件のうち前者に関わる問題については論文にまとめ公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年に西部諸州で起きた自警団WNSN結成の動きは、二期目に入ったブハリ政権最大の問題となってきた。北部から移動してくる牧畜民による西部の農村襲撃事件が急増していることを理由に、西部諸州の知事らが警察活動を補佐する自警団を設置しようと動いたのである。当然ながら警察権の一元化を主張する連邦政府は反対したが、警察権を侵害しないことを条件に設置は承認された。WNSNの設立に倣うように、IPOBは東部ナイジェリア安全ネットワーク(ENSN)の創設を宣言した。テロ集団に指定しされているIPOBの自警団結成をブハリ政権は認めるはずもないが、新たな脅威となってきていることは間違いない。そもそも州政府が独自に自警団を結成することは、地域の分権的勢力を勢いづかせる危険性がある。自由主義国家ナイジェリア建設を理想に掲げるディアスポラにとっては、この動きは歓迎されるものではないのでディアスポラの反応はまちまちである。 他方、#EndSARS運動は政治的近代化を目指すディアスポラたちの目的と完全に合致するものであり、彼らは直ちに連帯の意志を表明し世界各地でデモンストレーションを行った。この事件は、ディアスポラたちがナイジェリア国内の政治的運動と連動して動く絶好の機会を与えたといえよう。 自警団に関する分析はすでにアフリカレポートに公表し、#EndSARSに関する分析については講演などを通して公表していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に発表した論文と学会発表の成果をさらに発展させ、#EndSARS運動とディアスポラの関係について分析を深めていきその成果を公表する。本研究の課題として掲げていた、(1)ニジェール・デルタ紛争の動向調査、(2)2015年大統領選挙後の東部ナイジェリアの政治的周縁化問題、(3)ビアフラ独立運動におけるディアスポラの役割、のうち(2)と(3)は西部諸州における自警団設置の動きと連動したIPOBの動向を分析することでより最近の動きを追ってみたい。さらに昨年末から立ち上がってきた#EndSARS運動に関する分析も継続していきたい。 2021年度はコロナ禍の影響も注視しつつ文献調査を中心に進める予定にしているが、最終年でもあるので可能ならばナイジェリアのイバダン大学や連合王国のロンドン大学あるいはスウェーデンのノルディック・アフリカ研究所の中から一か所を選び研究成果の発表を行う予定で準備を進めたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:コロナ感染症流行のため。 2021年度の使用計画:本年度は最終報告に必要な資料(ディアスポラ研究、マイグレーション研究及び地域紛争関係を中心とする)の収集ならびに国内、海外における調査・研究発表の旅費等に総額90万円の支出を計画している。 内訳は下記のとおり;資料収集のため12万円:国内における成果発表のための旅費等10万円:海外調査・成果発表のための旅費等68万:以上です。
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