2021 Fiscal Year Research-status Report
Nigerian diaspora and secession movement
Project/Area Number |
18K11794
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
島田 周平 名古屋外国語大学, 世界共生学部, 教授 (90170943)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナイジェリア / ディアスポラ / 分離独立運動 / ビアフラ / 連邦制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度に続きコロナ禍のため現地調査が不可能となり、調査はもっぱら現地新聞や論文さらにはYouTubeにおける現地情報を利用した分析が中心となった。今年度は、ナイジェリアにおけるディアスポラの国内政治への影響とそれに対する政府の対応について分析を行った。ナイジェリアは、サハラ以南アフリカの中で突出したディアスポラ送出国であり、現在アメリカには150万人、イギリスには200~300万人居住しているという。彼らの本国送金額も莫大で、ナイジェリアの受取額はサハラ以南アフリカ全体の65%を占めている。政府にとってディアスポラの存在は無視できないものとなっている。 政府とディアスポラの関係は時に緊張を孕むことがあり、とりわけ2期目に入ったブハリ政権に対するディアスポラの批判や要求は厳しくなってきている。1つは国際派的視点からの政治的民主化要求や強権的政治に対する批判であり、いま1つは民族派的視点からの分離独立要求である。 政府は、国際派ディアスポラの民主化要求や人権擁護の要求に対しては、国内の反政府運動との連携を阻止するため銀行口座の凍結やSNSの規制などで応じた。一方、独立を目指す政治組織IPOBに対しては、民族派ディアスポラも含めて徹底的に抑え込む方針で臨み、IPOBと国内(東部)の政治家や伝統的支配者との分断を図った。ブハリ政権は、ディアスポラの活動が国内の反政府運動や独立運動と連携することがないよう細心の注意を払っている。 この研究成果は雑誌論文で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の調査では、ディアスポラたちの本国政治に対する影響力の限界性-すなわち彼らが掲げる人権擁護、平和実現、政治の透明性・公平性という普遍的要求の国民への訴求力の弱さ-と、彼らの政治的基盤の弱さを指摘した(島田 2019)。2020年度と2021年度の研究では、西部ナイジェリア諸州で起きた自警団創設の動きと#EndSARSの運動に対するディアスポラの対応を通して、彼らの政治的運動に見られる特徴の分析を試みた。 政治の近代化を目指すディアスポラにとって、州レベルの自警団創設の動きは分離主義的運動につながる非民主的動きと映るようで、積極的な関与は見られなかった(島田 2020)。これに対し、暴力的行為で悪評の高い強盗特殊部隊(Special Anti-Robbery Squad)廃止を要求する#EndSARS運動は、政治の近代化を目指すディアスポラたちの目的と完全に合致するものであり、SNS上での支援はもとより資金援助にも熱心であった。これに対し政府はSNSの規制や送金の管理を強化し、国内の反政府運動とディアスポラの運動が連携しないように注意を払ってきた(島田 2021)。 公表した論文は下記の通りである。島田周平 (2019) 「ナイジェリアの選択-大統領選と示されたメッセージ」 『世界』 920 pp. 221-227.(ISSN 0582-4532);島田周平 (2020)「連邦制問題を目覚めさせた「ヒョウ」-西部ナイジェリアで設立された自警団アモテクン考-」『アフリカレポート』No.58 pp.102-115.(ISSN2188-3238); 島田周平 (2021)「ナイジェリア人ディアスポラとブハリ政権」『アフリカレポート』No.59 pp.122-132.(ISSN2188-3238)。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、本研究の課題である(1)ニジェール・デルタ紛争の動向調査、(2)2015年大統領選挙後の東部ナイジェリアの政治的周縁化問題、(3)ビアフラ独立運動におけるディアスポラの役割、のうち(2)と(3)に重点的に取り組みたい。 コロナの影響により本研究が2カ年延長したことで、本研究の最終年度中(2023年2月)に大統領選挙を迎えることになった。この選挙では大統領の地域輪番制問題が再浮上し、これまで大統領を出していない東部ナイジェリアにおける期待が高まっている。進歩的ディアスポラたちにとっては、地域輪番制は非民主的制度でありそれを積極的に支持しない動きもある。しかし、ディアスポラの中で一番勢力の大きなイボ人のディアスポラ社会では彼らの出身地東部からの大統領選出を切望している人が少なくない。ビアフラ独立を訴えるIPOBの代表カヌが現在逮捕・収監されておりその裁判の行方にも注目が集まっている時でもある。 今年度は、異なる地域的背景を持つディアスポラたちが、大統領選挙を前にどのように多様な動きを示すのか分析してみたい。本年度が最終年であるので、ナイジェリアの大学において研究成果の発表を行いたい。コロナ等の影響でそれが困難な場合はロンドン大学等での発表に変更したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:コロナ感染症流行のため。 2022年度使用計画:本年度は最終報告に必要な資料(ディアスポラ研究、大統領選挙関係資料を中心とする)の収集ならびに国内、海外における調査・研究発表の旅費等に総額90万円の支出を計画している。 内訳は下記の通り:資料収集のため10万円;国内における資料・情報収集のための旅費等15万円;海外調査・研究発表のための旅費等65万円、以上です。
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Research Products
(1 results)