2018 Fiscal Year Research-status Report
Ethnoprimatological study on the dynamics and factors of mixed-species associations of Macaca species in Hong Kong
Project/Area Number |
18K11795
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
足立 薫 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (10802150)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒトと動物の関係 / 民族霊長類学 / マカク属 / 混群 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は香港、新界のKam Shan Country Park およびLion Rock Country Parkに生息する、2種のマカクザル(アカゲザル、カニクイザル)混群の基本的な移動経路の調査を行った。観察条件は比較的良好であり、順調にデータを収集している。来訪者の行動調査についても、属性、場所、行動などの大まかな概要を明らかにすることができた。また、Country Parkに隣接する地域は、高層の集合住宅が立ちならび、都市部で働く住民の生活場所となっているが、この地域にもマカクザルが頻繁に出没し、人間との間の軋轢が集中して起こっていることが観察された。香港マカクザルー人間関係のうち、特に人間からサルへの餌やりに注目してCountry Park内外での餌やり行動を記録し、サルの活動状況との比較を行っている。さらに、定期的に継続して餌やりを行う地域住民への、聞き取り調査を開始した。餌やりを行う地域住民は、お互いにネットワークを形成しており、マカクザルを介して社会的に相互に影響を与えながら活動している。彼らに継続的にインタビュー調査を行いながら、餌やり活動にも同行し、活動の内容や背景を解明することを試みた。 増えすぎたマカクザルが引き起こす問題に対して、香港では政府と民間の自然保護団体が共同で、個体数抑制のための避妊手術や、生態調査、環境教育のプロジェクトを実施しており、これらのプロジェクトチームのメンバーと連携を強めてきた。今年度は彼らの科学的なアプローチと、それに対する地域住民や観光客の反応についても調査した。マカクザルー人間の間に生じている問題について、科学的対処の重要性が住民に浸透してきている一方で、地域社会の価値観に基づく行動との齟齬が依然として存在する様子が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年9月に非常に勢力の強い台風Mangkhutが香港を直撃し、全土に大きな被害をもたらした。調査地域内は多数の倒木で危険な状況となっただけでなく、周辺の交通も麻痺状態だったため、計画していた行動調査を一部延期せざるを得なかった。 現地で観察した結果、2種のマカクザルは当初考えていた以上に、種間雑種形成が進んでおり、種の判別ほぼ不可能であり、異種が集まる混群の動態を調査するのは困難であった。そのため、予定していた混群動態についてのデータ収集を断念し、次年度以降は異種間関係の歴史的な変遷に焦点をあてることで、混群動態についての分析を補完する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、Country Parkとその近隣地域を中心に、マカクザルと人間の双方の行動調査を行う。現時点では香港のマカクザルについて混群動態を記録することは困難なため、今後は混血の成立過程の復元を目指すことで、異種間の関係を解明する予定である。平成30年度に地域個体群の歴史的成立過程復元のため、地域のアカゲザル個体の遺伝的分析に着手した。研究協力者の川添達郎氏とともに、中国本土のアカゲザルと比較しながら、由来を検討していく。 地域住民の調査では、現地で通訳と情報収集を行うインフォーマントの協力を得たことによって順調に進んでいる。一方で、フィールド外での文献資料の調査については、中国語の資料が多く分析が遅れている。31年度には翻訳のアルバイトを依頼し、効率的に進める予定である。 現地調査の事例をもとに、民族霊長類学的な視点から、香港におけるマカクザルと人間の関係について論文にまとめる予定である。民族生物学関連の国際雑誌への31年度中の投稿を目指している。また、香港のアカゲザル個体群の遺伝的組成とその成立経緯については、研究協力者と協働で論文にまとめて、31年度中の投稿目指している。
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