2019 Fiscal Year Research-status Report
Ethnoprimatological study on the dynamics and factors of mixed-species associations of Macaca species in Hong Kong
Project/Area Number |
18K11795
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
足立 薫 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (10802150)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ヒトと動物の関係 / 民族霊長類学 / マカク属 / 混群 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、香港、新界のKam Shan Country Park およびLion Rock Country Parkに生息する、2種のマカクザル(アカゲザル、カニクイザル)混群の基本的な移動経路の調査、および来訪者の行動調査によるデータを蓄積した。香港では2019年6月後半から、逃亡犯条例改正案に反対し民主化を求めるデモ活動と警察による対立が深刻化したため、調査計画は大幅な変更を余儀なくされたが、社会状況の変動に伴い新たな視点での行動観察を行うことができた。 現地調査では外出が可能な時期にはマカクザルの行動調査を中心に行い、安定した観察条件のもとで順調にデータを収集することができた。外出の困難な時期には、屋内でのインタビュー調査および香港政府の公文書館を利用した文献調査を行った。文献調査では、新界地域の自然保護状況を中心に、貴重な文献資料を収集することができた。インタビュー調査はインタビュイーと研究協力者の安全を確保したうえで実施するため、調整が非常に困難であったが、新たな人脈を構築し貴重なデータを得ることができた。さらに、社会情勢の不安定化に対する反応として、人々の野生動物への対応がどのように変化するかについても追加的に調査を行った。また、中山大学の川添達郎氏とGu Ningxin氏の協力を得て、マカクザルの遺伝的組成についての予備的な解析を行った。資料収集は香港漁農護理署(AFCD)および香港海洋公園自然保護基金(OPCF)の協力を得ている。両組織とは効率的な情報収集のための連携を継続して維持しており、調査結果の情報共有および今後の研究展開に対する協働基盤の構築に努めている。 以上の成果について、マルチスピシーズ人類学研究会やヒトと動物の関係学会において報告し、人類学や哲学などの異分野の研究者とも意見交換を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
AFCD職員や研究協力者を中心にネットワークの構築を進めることができ、少ない日程の中で効率的に調査を行っているが、政治状況の悪化、Covid-19の影響によりスケジュールの遅れが発生している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの現地調査の結果、2種のマカクザルは当初考えていた以上に種間雑種成が進み種の判別がほぼ不可能であり、異種が集まる混群の動態を調査するのは困難なことが判明した。そこで、異種間関係の歴史的な変遷過程により注目することで、混群関係成立の要因を明らかにする。歴史的な変遷を追うためには、マカクザル個体群の遺伝的組成とその成立経緯を明らかにする研究が必須であるが、数年単位の研究規模が必要であるため、遺伝的研究については今年度に現地研究者との協働関係を拡充し、実験・解析の環境整備を行う。 地域住民の調査では、現地で通訳と情報収集を行うインフォーマントの協力を得たことによって順調に進んでいることから、これを継続する。フィールド外での文献資料の調査については、中国語の資料の翻訳と分析のため、アルバイトを依頼して効率化を図る。国内調査地との比較および文献調査についても研究を進め、これまでに蓄積した香港のマカクザルと人間の行動調査データとあわせて、民族霊長類学的な視点から、学会などで成果を報告する予定である。さらに、これまでの成果を取りまとめて、霊長類学、民族生物学関連の国内・国際雑誌への投稿を目指す。
|
Causes of Carryover |
調査地である香港では、昨年6月ごろから逃亡犯条例改正案に反対し民主化を求めるデモ活動と警察による対立が活発化し、今年度後半以降、連携している政府機関などが在宅勤務となるなど情勢不安のためフィールド調査日程の多くを延期した。加えて今年1月にCovid-19が拡大したため、調査地への渡航を行えず、発表・参加予定だった学会についても、延期や中止が相次いだ。これらの理由により、現地調査と成果報告のための費用を繰り越した。 次年度にはCovid-19によるパンデミックの収束を待ち、調査項目を精査したうえで延期した分の現地調査を行う。資料の整理補助の人件費と、英文での成果公開のための英文校閲費用を計画している。また、昨年度に延期・中止となった学会での報告や参加を予定しており、繰り越し分の旅費を充当する。
|