2020 Fiscal Year Research-status Report
Ethnoprimatological study on the dynamics and factors of mixed-species associations of Macaca species in Hong Kong
Project/Area Number |
18K11795
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
足立 薫 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (10802150)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒトと動物の関係 / 民族霊長類学 / マカク属 / 混群 |
Outline of Annual Research Achievements |
Covid-19感染拡大に伴い、今年度は香港、新界地区での現地調査を実施できなかった。感染拡大に加えて、政治情勢が不透明であり現地での研究協力を得にくい状況にある。現地調査再開に備えて、これまでに蓄積した2種のマカクザル(アカゲザル、カニクイザル)とヒトの観察データを整理分析し、混群の移動経路の分析および地域住民の来訪者との関りについて、エスノプライマトロジーの視点からの取りまとめを行った。資料収集で協力体制を築いてきた香港漁農護理署(AFCD)および香港海洋公園自然保護基金(OPCF)とも適宜連絡を取り合い、今後の調査再開に備えている。 これまでに香港政府の公文書館を利用し収集した文書資料に加えて、オンラインアーカイブを用いて香港の自然保護活動についての調査を継続して行った。とくに香港の歴史的社会状況と、新界地区の郊野公園の設立の関係についての取りまとめを行っている。 現地調査による行動データと、文献調査による生態史の復元データを合わせることにより、地域の文化生態複合としてのヒトと動物の関係を考察するとともに、方法論としての都市のフィールドワークについての発表も行った。 現在、海外調査が実施できず次年度前半の再開は見通せないことから、国内を含めひろく野生動物全般の餌づけ、人なれについての資料収集を開始した。これらの資料は、ヒトと動物の関係をより広い視野で捉え、自然認識の人類学と動物のエスノグラフィーの接合を目指す新しい視点として重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19感染拡大の影響により、現地調査を行うことができずデータ収集に遅れが発生している。これまでに得たデータの分析を進めて現地調査再開に備えるとともに、国内で複数種の動物を対象にヒトと動物の関係に関わる資料収集を新たに開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの分析の結果、2種のマカクザルは当初考えていた以上に種間雑種成が進み種の判別がほぼ不可能であり、異種が集まる混群の動態を調査するのは困難なことが判明したため、異種間関係の歴史的な変遷過程に注目し混群関係成立の要因を明らかにする。この過程に人間活動がどのように関わっているのかを、生態史の視点から明らかにするため、地域住民の行動調査の分析を進める。海外渡航が可能になった時点で、通訳と情報収集を行うインフォーマントの協力を得て今回のパンデミックの影響も含めて調査を行う。文献資料の調査については、引き続き文書およびオンラインの情報を活用し、翻訳のアルバイトを利用して効率化を図る。国内調査地での他の動物種とヒトの関係の資料を蓄積し、香港のマカクザルと人間の行動調査データとあわせて、民族霊長類学的な視点から霊長類学、民族生物学関連の国内・国際雑誌で成果を報告する予定である。
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Causes of Carryover |
Covid-19パンデミックの影響で、現地調査による追加データの収集が予定通り進められなかった。このため、現地調査費用と成果発表の費用を繰り越した。次年度は感染症の影響が軽減され次第、調査を再開する。香港は今回のCovi-19の影響を早くから受けた地域であり、パンデミックが動物とヒトの関係にもたらした変化を新たな調査項目として追加し考察する。感染状況の改善が見通せない場合は、国内で別の動物種を用いた調査を行い、比較研究として成果をまとめる。資料の整理補助の人件費と、英文での成果公開のための英文校閲費用を計画している。
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