2021 Fiscal Year Research-status Report
災害や人道危機でのセクターを超えた協働が公共圏拡大に及ぼす影響
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18K11798
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
桑名 恵 近畿大学, 国際学部, 准教授 (80596073)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人道支援の現地化 / マルチステイクホルダープロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
*災害対応におけるマルチステイクホルダーガバナンスの可能性の分析 COVID-19影響下での複雑化する危機対応ガバナンスの一つとして、非国家アクターの関与を促すマルチステイクホルダーガバナンスの可能性に着目した。スリランカ(COVID-19、自然災害対応)、バングラデシュ(COVID-19、難民危機、自然災害対応)における複合対応を事例に、ベックのリスク社会論をもとに分析し、「災害リスクの軽減(DRR) におけるマルチステイクホルダーガバナンスの可能性ー新型コロナウィルス感染症(COVID-19 影響下での人道支援(スリランカ、バングラデシュ)」(山田満、本多美樹編著『非伝統的安全保障」によるアジアの平和構築』にまとめた。両事例からは、「下からの社会形成」を促すマルチステイクホルダーガナバンスが、これまでの伝統的なガナバンスでは乗り越えにくかった、領域を越えた協調関係や、新しい手法の試行を促し、空間的、時間的規定できない複雑化する危機への対応能力が高いことを示した。
*「人道支援の現地化」の潮流分析 「外務省NGO研究会」のアドバイザーとして、国際NGO、グローバルサウスのNGOネットワークとの意見交換を重ねることで、「人道支援の現地化」政策の実践に関わる情報交換、情報収集を行なった。また、人道支援の現在の潮流については、共同執筆者18名の協力を得て、『緊急人道支援の世紀ー紛争・災害・危機への新たな対応』を編集し、まとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響を受け、外部者が被災地へのアクセスが困難になることにより、内部者と外部者の境界がより鮮明になり、対立が鮮明になったり、支援の遅れが生じるなど、連携が困難になる傾向が生まれている。昨年度行ったマルチステイクホルダープロセスによる考察に加え、内部者と外部者が境界を越えて交わり、新たな創発を促すプロセスについて「バウンダリースニング(境界連結活動)」の概念から、日本の自然災害対応の事例に(佐賀県、熊本県、東北地方)分析を進めている。スリランカの考察については、本年度現地調査を行うことで、COVID-19や経済危機対応を含めた、マルチセクターガバナンスの可能性と課題のまとめの考察を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
この2年間は、現地調査が実施できず、既知のネットワークを活用したオンラインによるインタビューにとどまっていた。本年度は、可能な範囲でスリランカ、東北、九州地方の人道支援に関する現地調査を行い、COVID-19や、複雑な変容を伴う危機対応において、セクターを越えた新しい形態の協力、連帯を、これまで考察してきたベックのリスク理論、アクターネットワーク理論の枠組みを参照しながらより詳細な分析を進める。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症により、国内外の現地調査が実施できなかったため。今年度は、国内災害に関わる調査として、東北、九州、千葉などで、地震、台風、豪雨災害の被災地での調査を行う。また海外においても、スリランカや他地域における現地調査を実施する。
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Research Products
(3 results)