2018 Fiscal Year Research-status Report
Research on the relationship between Han Chinese subgroups and the politics of the Chinese communist party
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18K11803
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤野 彰 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 名誉教授 (60646404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国共産党 / 中国革命 / 井岡山革命根拠地 / 族群 / 客家 / 袁文才・王佐殺害事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の平成30年度は(1)中国共産党政治と族群(とりわけ客家)に関する資料の収集・分析(2)共産党政治に族群問題が反映された最初のケースである井岡山革命根拠地の現地調査(平成30年9月、江西省井岡山市)――に重点を置いた。研究資料については、国内においては主として東洋文庫、国立国会図書館関西館の所蔵資料を調査したが、文献の不足を補うため、北京の中国国家図書館や井岡山の現地でも資料収集を行い、一定程度の収穫があった。 井岡山革命根拠地に現地調査の焦点を絞ったのは、毛沢東が農村根拠地建設にあたって初めて直面した族群問題が井岡山地域における土籍(先住の江西人)と客籍(移住民の客家人)の間の歴史的対立だったことによる。土客籍矛盾は共産党の農村革命運動の深刻な足枷となり、最終的には党内の土籍グループが客籍の紅軍幹部だった袁文才、王佐を内ゲバで惨殺するという事件を生じさせることになる。 本研究では、第一段階の目標として、井岡山のこの内ゲバ事件こそが「共産党と族群」問題の原点に位置付けられるとの認識に立ち、共産党が矛盾克服のために、階級闘争理論に基づく革命イデオロギーによっていかに族群問題を政治的に封印していったか、を明らかにする。井岡山の革命史跡等の展示内容の調査、現地の革命史研究者との意見交換、歴史文献の調査・分析を通じて、族群問題が初期の農村根拠地建設と毛沢東の革命路線に与えた影響をおおむね解明できたと考える。また、従来の研究ではほとんど検討されてこなかった袁文才・王佐殺害事件への毛沢東の関与の可能性についても、ある程度の新たな知見を得ることができた。以上の論点に関しては、とりあえずシンポジウム「革命・民族・客家――原点から現代中国を問い直す」(平成30年12月1日、北海道大学)において研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究達成目標であった(1)広範かつ徹底的な資料調査・分析(2)現地調査を踏まえての井岡山革命根拠地の族群問題(土客籍矛盾)の再検討――の2課題について、おおむね任務を達成できた。 共産党史関連の文献・資料は、政治的理由から未公開のままとなっているものが多数存在すると推定されるが、アクセス可能な公開資料を丹念に調査し、分散的に記述されている事実を、有機的に統合していくことによって、歴史の中に埋没していた「新事実」の輪郭をある程度は浮き彫りにすることができるとの確証を得ている。中国の研究者たちが政治的制約によって研究議題に設定することが困難な分野(例えば、毛沢東と袁文才・王佐殺害事件の関連性)に切り込んでいくための道筋も見えてきたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年)は、「共産党と族群」の問題を、中華人民共和国建国当初の広東省の土地改革運動、反地方主義闘争の中に見ていきたい。中心的な議題は、広東の客家人指導者であった葉剣英が広東土地改革運動の中で、毛沢東ら上層部からいかに「地方主義」との批判にさらされ、その底流に「族群=客家」問題がどのような形で存在していたのか、を明らかにすることである。引き続き徹底した資料分析に取り組む一方、現地調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度は計2回の中国出張(井岡山、北京)を行ったが、勤務校の業務の関係でそれぞれ7日、5日の短期滞在で帰国せざるを得ず、当初計画していた広東省広州での資料調査等を次年度に先送りすることになった。次年度使用額が生じたのは主としてこの理由による。 平成31年度(令和元年)の広東省での現地調査、北京での資料調査に際して、必要な旅費、資料収集費などに計上する予定である。余裕があれば、江西省の現地再調査も行いたい。
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Research Products
(3 results)