2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on the relationship between Han Chinese subgroups and the politics of the Chinese communist party
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18K11803
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤野 彰 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 名誉教授 (60646404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国共産党 / 中国革命 / 毛沢東 / 井岡山革命根拠地 / 族群 / 客家 / 袁文才 / 王佐 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の平成31(令和元)年度は、初年度に引き続き井岡山革命根拠地におけるエスニック矛盾(先住民の土籍と移住民の客籍=客家の間の歴史的対立)に焦点を絞り、中国共産党=毛沢東がいかにこの土客籍矛盾に対処し、結果的にどのような問題を生じさせたかについて幅広い史資料の収集・分析を行った。国内での史資料調査には限界があるため、令和元年度は台湾でも研究調査を行い、中央研究院近代史研究所図書館および国家図書館で史資料の発掘に努めた。特に重点的に解明に取り組んだのは、井岡山の客籍の土匪首領であった袁文才・王佐の二人を、毛沢東が革命軍に取り込んで改造したが、土客籍対立が党軍内に反映されたことなどにより、袁王が内ゲバにより殺害された事件の原因と背景の多角的な検証である。その結果、いわゆる「通説」とは異なる事件の経緯(とりわけ毛沢東の関与の可能性)に関し、深い知見が得られた。井岡山の客家問題は共産党=毛沢東にとっては農村革命闘争の「トラウマ」となり、その後の政治的意味合いにおけるエスニック問題封印へとつながっていった可能性も確認できた。 これまでの研究成果は書下ろしの単行本(400字×900枚前後)として令和3年度に刊行する計画である。草稿を踏まえて、令和元年秋から本格的なまとめ作業に入り、令和2年4月時点で全体の約60%を書き終えた。執筆作業はおおむね順調に進行している。現在、北海道大学出版会と出版計画について協議中であり、併せて出版のための科研費(研究成果公開促進費)応募の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の中国国家図書館(北京)や井岡山現地での調査に続き、台湾でも史資料収集を行ったことで、幅広い文献調査が実現できた。また、調査と並行して取り組んでいる原稿の執筆作業がほぼスケジュール通りに進んでおり、令和2年夏頃にはいちおう脱稿できる見通しとなっている。ただ、当初、令和2年1-3月頃に予定していた広東省広州等での調査は、コロナウイルス問題の影響で渡航が不可能になったため、延期せざるをえなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
原稿の完成までに確認しなければならない史資料がまだ一部残っており、日本国内では所蔵されていないため、その調査は中国で行う必要がある。コロナウイルス問題で出張できない状況が続いており、今後の見通しは不透明であるが、可能な限り今年度中に機会を捉えて実施したいと考えている。研究がようやく仕上げ段階に入ってきているので、原稿のまとめ作業に全力を傾注するつもりである。研究上の錯誤や遺漏がないかどうか、分析結果を慎重に点検しつつ、内容の充実に努めたい。
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Causes of Carryover |
計画していた海外での調査のうち、広東省での調査はコロナウイルス問題の影響により、先送りせざるをえなくなった。次年度使用額が生じたのは主としてこの出張計画が取りやめになったことによる。コロナウイルス問題の今後の推移を慎重に観察しながら、現地調査の実施可能性を探りたい。
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