2021 Fiscal Year Research-status Report
タンザニア南部高地における「火」の制御を核とした植林技術の普及に関する研究
Project/Area Number |
18K11804
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
近藤 史 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (20512239)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 植林 / 林業 / 樹木作物 / 林産資源利用 / 持続可能性 / 地域産業振興 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではタンザニア連合共和国における産業植林先進地域と後発地域の比較を通して、林業普及に必要な知識・技術を整理するとともに、普及の過程で直面する諸課題に即して技術の適正化を促す社会組織や外部支援の在り方を検討することを目的としている。 2021年度は8月から10月にかけて、同国モンバ県とムビンガ県、ンジョンベ県において、植林実践活動に取組む住民グループのメンバーらにインタビュー調査をおこなう予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症の流行によって、前年度に引き続き2021年度も渡航を断念せざるをえず、現地調査を中止したため、研究計画を予定どおり遂行できなかった。 同国での現地調査再開の見通しが立たないことから、2021年度は、タンザニアの事例との比較にむけて昨年度から着手した、我が国における林業や樹木作物栽培に関する文献資料調査と現地調査を継続して実施した。今年度は主に、青森県津軽地域の伝統工芸・津軽塗およびその周辺産業(ウルシ栽培と漆液採取、木地の生産・加工)について、文献資料調査やインタビュー調査を実施した。 調査の結果、高度経済成長期にブライダル市場やギフト市場向けに津軽塗が生産と売上げを拡大した背景にある、2つの注目すべき点が明らかになった。第一は、津軽塗生産会社11社が集まった津軽塗団地の設立である。これにより分業・量産体制が整備されるとともに、国有林の払い下げが認められて原料の安定調達も可能になった。第二は、地方公設試験研究機関が果たした役割である。そこでは東京藝術大学出身の技官とともに地元職人も現地採用職員として雇用され、中央の技術と在来の技術の相互作用のなかで多様な取り組みがおこなわれた。分野横断のコミュニケーションが促進されるとともに、必ずしも生産効率の追求だけでなく、津軽塗の多様性を深化させる方向にも技術開発や調査研究がすすめられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究計画では、中心的なデータ収集手段としてタンザニア連合共和国における現地調査を設定していたが、前年度から続く新型コロナウィルス感染症流行によって、2年間にわたって同国へ渡航できず、当初の研究計画を予定どおり遂行できなかった。 タンザニアへ渡航できないことから、日本の林業および森林資源利用の調査を取り入れ、アフリカの事例との比較をおこなうように研究計画を修正したが、新たな調査計画を軌道にのせるまで時間を要する。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画を変更して、タンザニア連合共和国における植林・林業の事例と、我が国における林業や樹木作物栽培・利用の事例との比較研究にむけて国内の研究フィールドを開拓中であり、今後調査を深める予定である。本研究は、当初、タンザニア南部高原に位置する3県での現地調査に基づいて、植林・林業の取り組み事例の地域間比較をおこなう計画であった。しかし、 2020年度以降、新型コロナウィルス感染拡大によって、同国への渡航は困難となり、計画通りに研究を遂行できない状況にある。現時点では、急速な状況改善は見込めないことから、やむを得ず、研究計画を変更した。 タンザニア連合国の植林・林業に関しては、これまでに収集した現地調査データの分析と、文献資料の分析をすすめる。ただし、2020年度・2021年度に調査予定だったムビンガ県の事例分析は断念し、2019年度までにある程度のデータ収集をすすめていたンジョンベ県とモンバ県の事例分析を中心におこなう。今後、同国の感染状況が改善し渡航が可能になった場合は、安全確保に注意して現地調査を再開する。 我が国の林業や樹木作物栽培に関しては、これまでに、北東北地域(津軽地域および南部地域)においてリンゴ栽培に関する事例、津軽塗に用いられる木地やウルシ液に関する事例について、文献資料調査やインタビュー調査に着手した。今後は、これらの事例を継続して調査するとともに、香川漆器や発酵茶など林産資源の多面的な利用が盛んな四国地域にも調査対象を広げる。これらの地域において林産資源の生産・加工が発展していった歴史的プロセスについて、消費地である都市部との関係性に注目しつつ、タンザニアの事例と比較することによって、条件不利地域でいかにして林業や樹木作物栽培が普及・産業化しうるのかという視点から新たな知見を得られると考える。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症流行によって、計画していたタンザニア連合共和国での現地調査を実施できなかったため、海外旅費やレンタカー借料の支出がなく、次年度使用額が生じた。新型コロナウィルスの感染状況に応じて、タンザニア現地調査または日本国内での現地調査を実施し、これらにかかる旅費やレンタカー借料として使用する予定である。
|