2018 Fiscal Year Research-status Report
多様化する中華学校における音楽教育の民族音楽学的研究
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18K11808
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
有澤 知乃 東京学芸大学, 留学生センター, 准教授 (90588906)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 音楽教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
全国の中華学校五校のうち二校について小学部の音楽教育の実地調査を行なった。それぞれ使用している教科書の提供を受け、取り上げられている歌曲・器楽曲について以下5つの項目を調べた:(1)曲名、(2)作詞者・作曲者、(3)作曲年代、(4)その他、作曲の背景等。更に、楽器の紹介や楽典の他、特定の作曲家のバイオグラフィー等の項目も加えて、全体のデータベース化を行なった。これらをもとに各校で用いられている教材の大まかな特徴や相違を把握すると共に、1学年から6学年までに扱われる教材内容の変化についても詳細に検証した。具体的な項目としては、日本と中国の歌曲や器楽曲のそれぞれの分量、曲のテーマ(自然描写、愛国心、愛郷心、勤勉の奨励、生活関連、民謡や伝統楽器、少数民族の音楽、その他)などについて考察を行なった。 教員からの聞き取りでは、現職の教員に加えて過去に音楽を担当していた教員にも聞き取りを行った。現職教員からは現在の学校における教育方針の概要に加えて音楽教育の目的及び教材選択の背景、更には授業の実践方法や問題点について聞いた。特に児童の国籍や経歴の相違により授業運営にどのような影響が出ているか、また保護者は学校の音楽教育の内容に対してどのような意見を持っているのかということ等を詳しく聞いた。過去の担当教員への聞き取り調査では、中華人民共和国成立時における日本の中華学校の音楽教育への影響や、文化大革命から改革開放に至る時期に用いられた教材の変化などを聞き、今日の音楽教育に至る教育目的や教材内容の変遷について検証を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はデータベース化を中心に進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
他の学校の教材を入手し内容をデータベース化すると共に、各学校における音楽教育の方針について比較考察を行なう。また授業を観察し使用言語や構成、児童生徒と教師との関わり方について考察を行なう。さらに各教材(歌や楽曲)が、実際の授業の中で、どのような意味合いをもって伝達されているのかを見ていく。授業の観察に加えて、担当教師からの聞き取りを更に進め、教材で取り上げられている曲を選択した背景、それぞれの歌・楽曲で児童生徒に感じてほしいこと・理解してほしいこと・学んでほしいことは何かを検証していく。
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Causes of Carryover |
初年度はデータベース化を中心に進めたため次年度使用額が生じた。差引額24,892円は次年度旅費等に使用する。
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