2022 Fiscal Year Annual Research Report
Ethnomusicological Research on the Music Education at Diversified Chinese Schools in Japan
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18K11808
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
有澤 知乃 東京学芸大学, 大学教育研究基盤センター機構, 准教授 (90588906)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中華学校 / 音楽教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
横浜山手中華学校と横浜中華学院で用いられてきた小学校の音楽科教材の検証と音楽担当教員への聞き取りから、1950年代から現在までの音楽教育の大きな変化をたどった。 横浜山手中華学校では、同国成立から文化大革命期にかけては、共産主義を称える革命歌や毛沢東語録歌の教育が柱となっていた。1980年代以降は、中華民族としての誇りを涵養する歌や多民族国家中国の団結を象徴する歌に加えて、祖国愛を描いた映画音楽なども取り入れられるようになった。現在は、独自に作成した中国語の教科書と日本の公立学校で用いられている教科書(教育芸術社)が併用されている。独自の教科書では、低学年では学校生活や日常生活に関する歌や動物や自然に親しむ歌などが中心となっているが、学年が上がるにつれ、中国の少数民族の民謡や、中国の情景や「祖国」中国との結びつきを想起させる歌が増えてくる。日本の教科書からは、唱歌やリコーダーが教えられており、特に日本人なら誰でも知っている歌が重視されていることが分かった。 一方、横浜中華学院では台湾の公立学校で使用されている音楽科の教科書(南一書局)が主たる教材であり、日本の教科書からは一部をコピーして使用するに留まっていることが分かった。台湾の教科書は、中国あるいは台湾の童謡や伝統音楽よりも、欧米の童謡に中国語の歌詞をつけたものや、オーケストラやオペラの鑑賞など西洋音楽のほうが充実しており、特に祖国愛を喚起するものではなかった。 両校では近年、華僑の子供たちのルーツの多様化や、将来のビジネスチャンスを見込んで子どもに中国語を習得させようとする日本人の児童の増加がみられ、音楽への向き合い方や音楽教育への期待も多様化していることが分かった。
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