2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K11809
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
洪 郁如 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (00350281)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 台湾 / 少国民 / 戦後 / 日本教育 / 戦争記憶 / 植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、台湾人「少国民世代」の戦後史を、東アジアの政治変動の角度から考察し、その世代の特徴と地域史における重要性を提示することにある。「少国民世代」とは、日中戦争および第二次大戦中に小学生だった世代の台湾人であり、日本統治期の教育と戦争経験を原点に持ちながらも、戦後、中華民国国家の教育をも受けた世代である。台湾、米国、日本など多方面にわたって展開した彼らの進学と就職のライフ・コースについて、本研究は社会史研究の手法により解明を試みる。聞き取り調査を通じた対象世代のライフ・ヒストリーの構築により、当該世代の戦前日本経験と中華民国時期の戦後経験の歴史的な意義を、とりわけ東アジアの冷戦体制における政治変動の視角から総合的に把握する。 周知のように、2020年3月以降、新型コロナウィルス感染症による被害は世界中に拡大し、海外渡航や米国への入国規制が続いている。当初、予定していたカリフォルニア州での現地調査は実施不可能になった。このような厳しい制約のなか、現地での情報収集を中断させないためオンライン・インタビューと電子メールにより一部の聞き取りを実施することができた。2020年度の研究実績は、以下の通りである。第一に、聞き取り調査について、アメリカ在住の対象者を中心に、台湾人「少国民世代」に関するオンライン・インタビューを実施した。第二に、資料収集について、アメリカ、日本を中心に台湾人「少国民世代」に関する英文、和文、中文の出版物を入手し、また、一部の対象者と文通する形で、回想録、写真などの関連資料を入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.聞き取り調査:アメリカ在住の4名のインフォーマントを対象にZoomによるオンライン・インタビューを実施した。事前に詳細な調査項目を送付したため、効率的にインタビューを行うことができた。実際には7人に依頼を行ったが、3人にはインタビューを断られた。また、オンライン・インタビューの実施手法にともなう難点として、(1)インフォーマントのZoom操作の習熟度、(2)パソコンなどの操作に協力できる家族の有無、(3)インフォーマント側の安定した回線環境の有無、が挙げられる。また、(4)パソコン画面を通しての長時間のインタビューは、高齢者にとっては大きな負担となるため、対面調査よりも時間を短縮する必要がある。(5)日米両地の時差とインフォーマントの生活リズムに合わせるため、インタビュー日時の調整も実際の現地調査より困難であった。 2.資料調査:以上の問題により、2020年度の研究は資料調査に重点を置いた。(1)アメリカ、日本、台湾在住の1930年代生まれの台湾人世代を対象に、彼ら/彼女ら自身が執筆した記録、あるい英文、和文、中文の出版物を購入し、精読したうえで初歩的な分析を行った。(2)一部の対象者と文通する形で、回想録、写真などの関連資料を収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の終息時期について、現時点では予測できないため、2021年度には、引き続きオンライン・インタビューと資料調査を中心に行う予定である。 1.聞き取り調査:(1)アメリカ、台湾、日本三地の「少国民世代」台湾人を対象に、オンライン・インタビューを継続する。すでに複数のインフォーマットから承諾を得ており、5月以降に順次実施する予定である。(2)すでに聞き取りを行ったインフォーマントの一部についても補足調査を実施する。 2.資料収集とデータ整理:米国、台湾、日本で出版された「少国民世代」台湾人の関連出版物を購入し、電子メールなどを通じて対象者の回想録、自伝、証言などを収集する。聞き取りの音声データを文字化する作業を継続する。 3.成果発表:以上の成果を研究ノートや論文として発表する。 新型コロナウィルス感染症が終息し次第、直ちに海外調査を再開する予定である。
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Causes of Carryover |
理由: 新型コロナウィルス感染症による被害は世界中に拡大し、海外渡航や米国への入国規制が続いているため、当初、予定していたカリフォルニア州での現地調査は実施不可能になった。 使用計画: 2021年度分の助成金と合わせて、データ収集、整理、分析に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)