2021 Fiscal Year Research-status Report
Effect of traditional plant utilization on the creation of regionality and the environment.
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18K11814
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大野 朋子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10420746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大形 徹 立命館大学, 立命館大学衣笠総合研究機構, 教授 (60152063)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フレンチ種 / 色 / 品種 / 宗教行事 / フィールド写真 / 流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの写真画像を整理し、主にネパールにおけるマリーゴールドの品種に関する情報の抽出を行った。現在、30種以上の多種多少な品種が存在しており、花色はオレンジ、黄色、赤、バニラ、ピンクが知られている。2014年以降のネパールでのフィールド調査写真では、フレンチ種でオレンジ色のマリーゴールドが最も多く利用されており、黄色の花の利用も見られる。特に花序を紐で連結させたものは、ティハール祭での家屋の装飾、祝いの対象への首飾り(マラ)に用いられ、花序の直径2.3㎝~3.5㎝の小ぶりのものが一般的に多い。この傾向はカトマンズやパタンなどの大都市に比べて地方都市に多い。一方、商業施設やホテルでは、花序の直径4.5~7.8㎝のアフリカン種の利用が多く見られ、このアフリカン種は鉢植えでの装飾も多く、ガーデニングにも用いられていた。カトマンズ、パタンの市場や路上、商店では花序が大きく花の数も多いアフリカン種の販売が大部分を占めていた。 全体的にネパールでのマリーゴールドの利用は切花ではなく、花序を使用した飾りが多いが、曼荼羅やサラソウジュの葉に載せるお供えにはフレンチ種のオレンジ色、黄色の舌状花を使用する。この場合、花序の見栄えよりもお供え等に対する色が重視されていると思われる。オレンジ色が好まれるのは富や豊穣の女神ラクシュミに因み黄金を連想させるとも聞いているが、祭祀に使用される植物はオレンジ色のものばかりではなく、ジャスミンの白い花やセンニチコウのピンクの花も多用される。マリーゴールドはアフリカン種で白花(バニラ)が存在するが、ネパールでは一部の鉢植えで見られたものの、祭祀での利用はされていない。 ネパールでの祭祀植物の選択は流通の発達から、より多様化していくものと思われるが、これらの結果を踏まえ、外来種であるマリーゴールドの導入とともにその選択基準についても調査する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ネパールでのマリーゴールド利用の文化的背景を探るため、昨年に引き続きネパールヒンズー教および仏教に関連する資料調査が不可欠だが、解読の困難さに加え、新型コロナウイルス感染防止対策による長期の著しい移動の制限から情報収集が行えず、作業、分析が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(2022年)は国内外ともに移動制限の緩和が見られ、補足データ取得のための調査が可能になると思われる。現状、ネパール、バリ島の渡航は可能であることから情報が不十分であったカトマンズでのマリーゴールドの利用品種やその導入経路等についても調査、確認を行う。さらに地域間比較として、インドネシアバリ島でのバリ・ヒンドゥー教での祭祀植物に関する調査を再度行いたいが、社会情勢により再び渡航、移動が不可、制限された場合は、これまでの現地データおよび入手可能な情報を用いて本研究報告を整理し、公表する。
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Causes of Carryover |
世界的な問題となっている新型コロナウイルスの感染防止対策により、前年度に引き続き4月以降も厳しい行動制限が課せられ、国内外ともに調査研究を行うことができなかった。また、情報整理のための協力者も新型コロナウイルスの影響で得られていない。そのため、人件費および出張旅費の執行を次年度で使用することになった。最終年度は現状、渡航、移動制限が緩和されており、ネパールおよびバリ島の現地調査は可能と思われるが、再び移動の制限が生じ、旅費を使用できない場合は、資料調査およびデータ整理に関わる人件費や成果の公表に関わる英文校閲等に多く予算計上する計画である。
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