2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of fishery clusters through collaboration of fisheries processing industry in the disaster areas of the Great East Japan Earthquake
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18K11818
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
新田 義修 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (80455534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 眞弘 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (60223468)
山本 健 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (10452997)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水産業クラスター / 雇用促進 / 水産加工業 / バリューチェーン / 東日本大震災津波 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、COVID-19対策を行う必要があり、例年とは異なる対応が求められた。それに対応して調査の方法も統計や文献などを中心としたものになった。令和2年度の主な調査内容は、水産加工業の現状と課題を「グループ補助金」(国)の統計データを基に整理した。さらに、事例組織が宮古魚市場からサケマス、イカなどの原材料を調達しているに対応して、宮古漁協のサケ定置について調査を行った。最後に水産業クラスターの再構築について、予備的考察を行った。 調査結果として、岩手県で近年申請されている「グループ補助金」は、主に大船渡、陸前高田市など県南部の企業によるものが多く、業種も主に商店街に関わる申請が多いことが明らかになった。2021年までの倒産件数は、17件(2020)となっており、2019年と比較して6件増加した。岩手県を含む宮城県・福島県の合計は、92件となっており、51(2019)⇒75(2020)⇒92(2021)と増加傾向にある。この中で、岩手県の倒産件数は、相対的には他の2県と比較して減少した。ただし、17件の内訳として水産加工業は、6件であり、これまで同様、最も倒産件数が多い。これに対して、事例地域で水産加工業者へサケマス、イカなどの原材料を提供している宮古漁協のサケ定置の実績は、前年度比で75%(数量)、45%(金額)という結果であった。そのため、宮古市からの協力によって、新たに実施しているトラウトサーモンの海面養殖の取組が、新たな収入減として期待されつつある。トラウトサーモンの販売単価は、平均で860円/kgとなっており、定置アキサケ(メス)1,596円/kgとアキサケ(オス)481円/kgと比較して、ちょうど中間の価格帯となった。今後は「宮古トラウトサーモン」として、新たなバリューチェーン構築による水産業クラスターの再構築につながる可能性を見いだすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象地におけるCOVID-19ウィルス対策として人や物流が滞ったことによる、復興の遅れは否めない。他方、宮古市から盛岡市までの復興道路が3月末に整備されたことによる交通アクセスの向上により、釜石市や大船渡市など従来相対的に盛岡市、仙台市などへの交通アクセスの良好な地域との交通アクセスの条件の差による課題を解決する条件が整った。 本研究では、①企業間連携によるシナジー(相乗)効果、②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築、③雇用創出効果の解明について調査研究を行っている。本年度は、主に②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築について研究を行った。この背景には、企業間連携によるシナジー効果について、概ねメリットを各企業が享受したことが上げられる。現在、当初事例とした水産加工業者は、震災前に収益源としていた中核的な事業を再構築しつつある状況にある。これまでイカの不漁が続いていた事例経営体もタラの加工へ事業展開を広げつつあり、イカの不漁傾向が緩和されつつ状況にもある。 昨年から本格的に始められた、漁協によるトラウトサーモン養殖は、サケ定置による収入で漁協経営を支えていた岩手県では、当面、試験操業としての位置づけになることが予想される。今回の事例のような海面養殖は、過去岩手県南で事業として禍根を残したことから、既存の養殖業(ワカメ、コンブ、ホタテなど)やサケ定置との棲み分けを十分考慮する必要がある。これに加えて、漁業権の設定をするタイミングで海面養殖を事業規模の拡大でロットを増やす可能性を検討することが可能になりつつある。この可能性は、当初研究計画で想定していた「新展開」そのものである。トラウトサーモン養殖は、漁協主体になることから、これまで研究してきた、水産加工業者の横のつながりによる、いわゆる「水平分業」とは異なる視点が必要になろう。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、令和2年度に引き続き主に①企業間連携によるシナジー(相乗)効果と②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築について調査・研究を行う。 まず、①企業間連携によるシナジー(相乗)効果は、新たな資源獲得のために行うものと、新たなビジネスモデル構築を目的にしているものであった。個別企業による新たな資源獲得のための取組が見られたことから、個別企業の取組と企業間連携による取組について調査を行う。特に、参加企業の収益性を支えていたイカ・うに・アワビ等の原料調達機能や従業員の経営管理に注目して、漁協で新たに取り組んでいる海面養殖(トラウトサーモン養殖)他について調査を行い、シナジー効果の検証と個別主体の事業計画への協業化の波及効果について引き続き検討を加える。 次に、バリューチェーンの再構築と産業クラスターの再構築について宮古市を含む周辺地域への調査を行う。これまで震災復興として注目されてきた商品が他の地域での震災により、相対的に注目度が低下したと想定されている。そこで、宮古市及び新規の販売先の現状と課題を整理することで、企業間連携による効果が引き続きどこに現れているのかについて検証すると共に、個別に企業が取り組むべき課題について、バリューチェーンの再構築に関する側面から検討を加える。そのことにより、水産業のクラスターの再構築がどのようになされるかについて予備的な考察を加える。 その上で、単一事業のバリューチェーンを商品構成と顧客の関係として仮説を示した上で、ターゲットのコスト構造は競合企業と比較した場合の優位性について可能な限り製造原価明細をもとに事業価値評価法を用いて分析を行う。
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Causes of Carryover |
調査期間中に事例地域でCOVID-19よる影響で調査地域の企業活動が滞り、調査をすることが困難になった時期があり、次年度使用額が生じた。現在もこの状況が続いているが、次年度使用額は、主に現地での調査のために使用する。
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