2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of fishery clusters through collaboration of fisheries processing industry in the disaster areas of the Great East Japan Earthquake
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18K11818
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
新田 義修 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (80455534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 眞弘 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (60223468)
山本 健 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (10452997)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水産業クラスター / バリューチェーン / 雇用促進 / 水産加工業 / 海面養殖業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021(令和3)年度は、先行事例との比較を通じて、今後予想されるサーモン養殖の技術革新及び商品化に関わる課題の整理と現況を分析した。その結果、国内の海面養殖は、主に瀬戸内海で「ブリ類養殖」による技術体系との比較分析が有用であることが示唆された。特に、ブリ、ギンザケ、ハマチ、マグロなど付加価値の付く魚類養殖を念頭においた「企業的な」取組が知られる。 これに対して、岩手県では、「定置網」を利用した沿岸漁業としての漁船漁業を主体としていたため、地域漁業の基幹的な位置づけになることはなかった。その後、サケの回帰率の低下による「サケ定置」の収益悪化が課題となっていた。そのような背景を持つため、岩手県内で先行している他の事例では、技術体系が販路と共に安定しているギンザケを選択していると考えられる。後発産地と言っても良い取組であるため、他の事例で明らかになっている販路の確保、種苗生産の確立、漁場の確保が課題となる。既存のサーモン養殖は、海外産との競合を念頭においたコスト削減を主眼とした技術体系を確立していたが、宮古地域のサーモンは、比較的小ロットにすることで、市場の確保を容易にする対応を想定していたと考えられる。そのことで、岩手県の先行事例と比較して単価を相対的に高く設定することが可能になったと考えられる。 具体的には、他事例は、600円/kg(ギンザケ)であったのに対して、事例としたサーモンは、800円/kg(トラウトサーモン、宮古産)という実績であった。これまで事例としてきた水産加工業者の取り扱い商品に新たにトラウトサーモンを加えることによって、商品の付加価値を加える取組も当該地域での対応として取り組まれており、今後、周辺地域での生産を加えることで、ロットの確保が可能となり、盛岡市、仙台市及び周辺地域、八戸市圏などへの販路の確保について検討する段階になりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①企業間連携によるシナジー(相乗)効果、②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築、③雇用創出効果の解明について調査研究を行っている。2021(令和3)年度は、主に②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築について調査研究を行った。 2021(令和3)年度も調査対象地におけるCOVID-19対策として人や物流が滞ったことと、イカ、サケをはじめとする基幹的な魚種の不漁による水産加工業者の課題は残っていた。その間、「サケ定置」の不漁を若干補う位置づけとして従来内水面養殖として八幡平市(「八幡平サーモン」)や盛岡市(「姫神サーモン」)で生産されていたトラウトサーモン養殖を海面養殖として実験的に生産・販売を始めた。 注目すべき点は、サーモン養殖を「サケ定置」の不漁を補うと言う意味で、「漁船漁業」の一端を成すものであるとするか、生け簀を確保して、餌を与えて養殖するので、岩手県で定着しているワカメ、ホタテなど「養殖業」として位置づけるかである。この点に関して先行研究をみると、海面養殖は、「養殖業」の一形態として見ているようである。そのため、当初、「サケ定置」の不漁を補う意味で、漁船漁業に関わる人員を配置していたが、今後は、養殖業の一部として技術体系を再編する可能性を示唆した調査結果であった。 今後は、「宮古トラウトサーモン」のロットを増やし、宮古地域に集積している水産加工業者による新消費の開発と販売先の開拓、そして、サーモン加工に関わる水産加工業者の漁協、市場を含めた①企業間連携によるシナジー(相乗)効果を発揮させる条件の解明が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022(令和4)年度は、主に①企業間連携によるシナジー(相乗)効果と②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築の最終とりまとめを行う。 まず、①企業間連携によるシナジー(相乗)効果は、新たな資源獲得のために行うものと、新たなビジネスモデル構築を目的にしているものであった。過去2年間で漁協による新商品(トラウトサーモン)導入に伴う、技術移転とフィージビリティースタディー及び実証実験(テスト販売)、商業化(「宮古トラウトサーモン」)を短期間に実施したことについて実証的に調査・研究を行う。これに関連して、②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築について宮古市を含む周辺地域への調査を引き続き行う。これまで震災復興として注目されてきたサケ、ウニ、アワビ、イカなどの商品が、不漁により相対的に注目度が低下したと想定されている。 そこで、漁協や個別に企業が取り組むべき課題について、バリューチェーンの再構築に関する側面から検討を加える。その上で、将来のあるべき姿を設定した上で、「バックキャスト法」を援用して、単一事業のバリューチェーンを商品構成と顧客の関係として示した上で、「シナリオプランニング」を用いて分析を行う。
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Causes of Carryover |
調査期間中に事例地域でCOVID-19よる影響で調査地域の企業活動が滞り、調査をすることが困難になった時期があり、次年度使用額が生じた。現在もこの状況が続いているが、次年度使用額は、主に現地での調査や新たに必要となる統計解析のためのソフト購入他のために使用する。
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