2020 Fiscal Year Annual Research Report
Where are Europe`s Welfare States Heading? Analysis from the Perspective of Social Expenditures
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18K11819
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 善典 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (50648326)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 欧州 / 福祉国家 / 社会支出 / 財政制約 / 構造 / 収斂 / 新しい社会的リスク / 現物給付 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年の各国の社会支出の動向を整理し、その傾向や変化の要因を分析することにより、社会支出の側面から欧州福祉国家の方向性を展望することを目的とする。 具体的には、①EU各国の各社会支出(老齢年金、医療サービス、障害給付、失業給付、家族児童手当、高齢者サービス、保育サービス、積極的労働市場政策)の変化、②それらの変化に影響を与えている要因、③①及び②を踏まえた福祉国家グループごとの社会支出の動向と中長期的な方向性を検討した。福祉国家グループの分類は、社会民主主義型、自由主義型、保守主義型、保守主義型(南欧)、その他のEU新規加盟国である。 分析の結果、福祉国家グループの社会支出は、経済社会の変動に対応する必要がある一方、それぞれ固有の構造(価値・規範意識、制度等)の下に置かれるとともに、厳しい財政規律が課されたため、EU全体として収斂が進むのではなく、それぞれの制約の範囲内で、各グループの特徴を維持し、又は強める方向に進んでいると考えられた。 現物給付が大きい社会民主主義型では更に現物給付が増加し、他のグループでは現物給付の貧弱さが大きく変化することはないであろう。社会支出面から見た福祉国家の形は、当面、新しい社会的リスク(介護、保育等)に対応して現物給付を重視する社会民主主義型、伝統的な社会的リスクに対応する現金給付中心の保守主義型(南欧)、自由主義型及び新規加盟国、徐々に新しい社会的リスクへの対応を進めている保守主義型という3つのクラブにまとまっていくのではないかと予想される。 この状況に鑑みると、日本で新しい社会的リスクに対応したサービスを拡充していくことは容易ではない。欧州福祉国家の動向からは、厳しい財政状況が続けば、自由主義や家族主義の要素を持つ日本の社会支出の特徴(例えば、子育て・介護の家族依存)が今後も継続する可能性があることが示唆される。
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Research Products
(1 results)