2018 Fiscal Year Research-status Report
Research on China's Outward Foreign Direct Investment and, Belt and Road Initiative
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18K11821
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
小原 篤次 長崎県立大学, 国際社会学部, 准教授 (00291039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 幸一 亜細亜大学, 付置研究所, 教授 (80406842)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自動車 / 一帯一路 / 中国 / 直接投資 / タイ / インドネシア / マレーシア / インド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は中国自動車企業の東南アジア直接投資を中心に文献調査、現地調査を実施した。中国が提唱する一帯一路構想の対象は欧州、アフリカ、中南米まで含む広大な構想である。インフラ投資、直接投資から留学生交換など教育分野にも及ぶ。先行研究は、港湾、鉄道、道路、空港などインフラ投資に注目したものが多い。しかし、同構想対象は旧社会主義圏も含めた開発途上国や中所得国が中心で、中国側および対象地域の政府(中国の経済協力の受け入れ国)からの情報開示も限られると予想した。そもそも、公共事業であるインフラ事業の採算性は高くなく、プロジェクトの持続可能性に債務上の問題も伴う可能性があると考えた。ただし、一帯一路構想のなかで、中国企業の対外投資については、1990年代末に提起された対外直接投資「走出去」につながっていることに着目した。 このため本研究は中国の対外企業活動、とりわけ自動車に注目。自動車生産・販売で中国が世界一の市場規模を誇る。中国は販売台数で2009年から米国を抜いて世界一、2017年で2912万台、日本の5.6倍、米国の1.7倍の市場規模だ。自動車生産は自動車部品が2万点にものぼり、裾野産業が広い。しかも販売では地元で販売店を展開し、大規模な広告宣伝を行う。調査対象地域は、主に東南アジア、従として南アジアとしている。こうした地域は、日本企業の販売シェアが大きく、中国企業の動向は日本への影響も多い。平成30年度は、インドネシア、タイ、インドで自動車工場、販売店などを訪問した。インドネシア、タイでは数年前より、中国系企業がすでに全国販売網をもち、少ないながらもSUV中心に一定の市場シェアを確保している。インドは小型車中心で中国が得意とするSUVは今後、本格化する段階。来年度は、現地協力者とのネットワークを活かしつつ、現地政府の政策も含めてアジアにおける自動車企業の将来を考察していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予算や日程の関係から、東京で1回しか研究会を開催ることができなかったため、関連する学会・研究会で研究分担者や研究協力者が参加する機会を捉えて、さらに意見交換をおこなった。小原は2018年度、ロンドン(SOAS/LSE)滞在となったが、往路の9月下旬、インドネシア、復路の3月下旬、タイ、インドを訪問することができた。インドネシアにおいては、工場訪問、販売店訪問、スラバヤモーターショーに参加することができた。タイでは、バンコックモーターショーに参加することができた。インドネシア、タイともに、中国系自動車メーカーが販売店を構築し、少ないながらも一定のシェアを獲得していることを確認した。日系の販売店やアフターサービスとの違いは大きい。当初、ミャンマーを考えていたが、インドでは、スズキなど小型車販売が好調で、インドネシアやタイとは自動車市場の構造、成熟の違いを確認できた。 小原はインドネシア、石川はマレーシアの自動車について、2018年度中に、論文を刊行している。 なお、研究代表者の小原、研究分担者の石川とも、専門雑誌のWEBサイトである世界経済評論IMPACT(http://www.world-economic-review.jp/impact/)、さらに小原は、社団法人世界経済労働研究所の所報で研究成果の一部を公開している。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、タイ、インドネシアを主なフィールドとして、中国自動車メーカーの直接投資の実態を分析した。その研究成果を書籍、論文、研究会報告として発表した。 研究計画調書に従い、2019年度は、中国企業の生産ネットワークや自動車物流を分析するため、中国、台湾、タイ、マレーシア、インドネシア、インドを調査する。 さらに、中国における電気自動車EVなど環境車政策が周辺諸国の政策に当たる影響の把握にも努めたい。ケーススタディーについては、タイについて進めていきたい。
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Causes of Carryover |
1年目の2018年度、4万円程度と少額ではあるが、使用に至っていない。研究代表者は、インドネシアやタイ、インドで予備的調査を行っている。 しかしながら、ロンドン滞在のための往復のフライト途上の機会を有効に活用したため、渡航費、滞在費、謝金、モーターショー入場料などに予算を使用していないためである。 次年度の研究費の使用計画については、初年度に予備的調査としての海外渡航費の費用と、本調査の準備のための資料集、翻訳、データ解析に要する経費等を中心に使用したいと考えている。また、調査機器等の物品購入費、研究成果発表のための旅費、人件費・謝金等に利用する。
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