2018 Fiscal Year Research-status Report
現代韓国における植民地史の再編と文化資源化に関する研究
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18K11823
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
金 賢貞 亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (20638853)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植民地史 / 文化資源化 / 近代文化遺産 / 群山 / 群山時間旅行祝祭 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1990年代末以降、地域に数多く残っている日本式建築物だけではなく、それまで否定・無視されてきた「植民地都市として開発されたローカル史」に新たな意味を付与するとともに、それらの文化資源化を積極的に進めてきた韓国全羅北道群山市を調査地に据え、当該地域で行われている重要な社会的実践としての「都市再生運動」「祝祭」「公共展示施設」を中心に〈植民地遺産の文化資源化〉の様相を明らかにするとともに、再解釈されつつあるローカル史=〈植民地期〉という過去がいかに「公的記憶」「公的歴史」に創りかえられつつあるのか、その具体的なプロセスと社会的・文化的意味を考究することに目的がある。 2018年度の研究実績は次のようにまとめられる。第一に、古い郷土誌、植民地期資料、マスメディア資料などとともに、群山市・群山文化院などの刊行資料、平成26年以降のマスメディア資料、観光パンフレットなどを収集・整理し、現地調査に備えた。第二に、「群山時間旅行祝祭」の最初の現地調査を平成30年9月9日から同月17日まで実施した。この調査で得られた成果は、①2018年度の群山時間旅行祝祭を観察し、記録することができたこと、②群山市行政関係者に当該祝祭の現状・課題などについて実際にインタビューを行い、行政側の立場から当該祝祭の意味づけが把握できたこと、③当該祝祭の実施期間中様々な市民団体や商店街、観光客、市内の学校などが関わっていること、④キーパーソンではなくても当該祝祭に関わっている様々な人々にその関わり方や感想が聞けたことである。 さらに特筆すべきは、本研究の事例研究地域である群山のほかにも木浦、鎮海など他地域においても植民地期のローカル史を文化資源化する実践が行われていることが把握できたことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、当初予定していた冬季の現地調査を実施することができなかったため、やや遅れている状況にある。その理由は、2018年度の冬季現地調査の対象である「群山都市再生大学」「協同組合ファンヴィレッジ(fun village)」の関係者たちとのコンタクトがうまく取れず、これらの団体を中心に据えて行うはずであった集中的な現地調査を実施しても、当初計画した通り、調査が進捗しないと判断し、実施を見送ったからである。しかし、その他の調査研究は、予定通り順調に進んでおり、遅れている部分について2019年度に実現する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究計画は次のようにまとめられる。第一、夏季現地調査を8~9月中に実施し、群山時間旅行祝祭に関わる様々なアクターとしての「群山市都市再生先導地域住民協議体」「住民自治型文化クラブ」「群山都市再生大学」「協同組合ファンヴィレッジ(fun village)」の関係者とコンタクトを取り、その関わり方を明らかにする。第二は、冬季現地調査を2~3月中に実施し、可能であれば、市内の小中学校の学生・教員の、群山時間旅行祝祭への関わり方や感想・意見などをインタビューしたい。最後に第三は、引き続き関連文献資料の収集と整理に努める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2018年度の冬季現地調査の対象である「群山都市再生大学」「協同組合ファンヴィレッジ(fun village)」の関係者たちとのコンタクトがうまく取れず、これらの団体を中心に据えて行うはずであった集中的な現地調査を実施しても、当初計画した通り、調査が進捗しないと判断し、実施を見送ったからである。しかし、以後行政側の関係者を通して関係者たちに調査の趣旨を説明し、協力について前向きなレスポンスを得ているため、2019年度に遅れている部分について実現する予定である。
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