2022 Fiscal Year Research-status Report
現代韓国における植民地史の再編と文化資源化に関する研究
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18K11823
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
金 賢貞 亜細亜大学, 国際関係学部, 准教授 (20638853)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 植民地史 / 韓国 / 文化資源化 / 近代文化遺産 / 群山 / 都市再生運動 / 群山時間旅行祝祭 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1990年代末以降、地域に数多く残っている日本式建築物だけではなく、それまで否定・無視されてきた「植民地都市として開発されたローカル史」に新たな意味を付与するとともに、それらの文化資源化を積極的に進めてきた韓国全羅北道群山市を調査地に据え、当該地域で行われている重要な社会的実践としての「都市再生運動」「祝祭」「公共展示施設」を中心に〈植民地遺産の文化資源化〉の様相を明らかにするだけでなく、再解釈されつつあるローカル史=〈植民地期〉という過去がいかに「公的記憶」「公的歴史」に創りかえられつつあるのか、その具体的なプロセスと社会的・文化的意味を考究することに目的がある。 Covid-19感染拡大による海外渡航の制約により実施できなかった現地調査を約2年ぶりに再開した。 2022年夏季期間中は、群山を含む韓国の地域で進行中の植民地遺産の文化資源化の現状を文献やインタビューから調べるとともに、韓国のナショナル・ヒストリーにおける「植民地史」の位置づけや活用、すなわち公共施設における展示の現状を調べるために韓国ソウルで資料収集等のフィールドワークを実施した。 同年冬季期間中は、群山市において植民地遺産としての日本式建築物の保存・活用の現状を把握するために「群山近代歴史館」「群山近代美術館」「群山抗争館」「湖南関税博物館」の展示内容を、Covid-19期間中の変化を念頭に置きつつ、巡検調査を行なうとともに、関連施設の学芸員や観覧客にインタビュー調査を実施した。また、日本式建築物を中心とした観光地化が進んでいる地域において民宿やカフェなどを経営している方たちにもインタビュー調査を行なった。 ほかにも、群山と同様に、植民地遺産が比較的多く残っており、それらの観光資源化が行政によって進められている慶尚北道浦項市「日本家屋通り」においても、群山との比較検討を念頭に置きつつ、現状を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19による約2年間の現地調査の中止により、当初予定していた計画通りに進められている状況ではない。2022年から現地調査を再開したため、それまで現地で入手できなかった資料や把握できなかった事柄などをまとめつつ、それらの入手や把握に努めた1年となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、長期フィールドワークを実施することによって、群山市における都市再生運動の実態の把握、それを支えている住民やそのグループ(「群山市都市再生先導地域住民協議体」「住民自治型文化クラブ」など)に対するインタビュー調査、群山の「植民地期」をテーマとする、全国的にも有名な「群山時間旅行祝祭」の参与観察調査、日本式建築物の活用方法、特に公共展示施設としての活用などに関する調査を行ないたいと考えている。
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Causes of Carryover |
既に上述したように、Covid-19の感染拡大によって約2年間、当初予定していた韓国での現地調査が実施できなかった。そのキャッチアップを図っているものの、2年間のブランクを2022年度の1年で埋めることはできなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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