2019 Fiscal Year Research-status Report
Survival Strategies of Minorities in South Asia: Towards Cohabitation from Inclusion and Exclusion
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18K11826
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
井上 貴子 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (10307142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 敏彦 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (00407652)
篠田 隆 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (20187371)
石田 英明 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (80255976) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 南アジア / マイノリティ / ダリト / ムスリム / 共棲 / インド / キリスト教徒 / 包摂と排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は全4回の研究会を開催し、個々の研究の進捗状況を報告した。第1回(2019年5月7日)では、代表者及び分担者の2019年度の研究計画を確認した。また、収集資料のデジタル化とホームページ開設に向けての準備作業、最終年度に研究成果をどのような形態で公開するかを具体的に話し合った。 第2回(2019年7月23日)では、分担者の石田英明が「ヒンディー文学とムスリム」と題して、ヒンドゥー・ナショナリズムが強化され、ムスリムにとって居心地が悪くなる現代インドにおける彼らの在り方や、ムスリム作家が自らの立場とインド社会との関係をどのように捉えているかについて報告した。 第3回(2019年12月17日)では、分担者の篠田隆が「インドにおける牧畜カーストの挑戦」と題して、「緑の革命」「白い革命」の中で衰退した牛経済への対応に遅れた牧畜カーストによる、近年の就学就業の高度化への取り組みの現状と課題について報告した。 第4回(2020年2月13日)では、来日中のデリー大学東アジア学科のG. Balachandirane教授に「Recent Migration of Indians: Potential Impact on Japan」と題して、人的資源としてグローバルな注目を集めるインド人IT技術者の日本における動向についての報告をお願いした。また、分担者の須田敏彦が「増加するバングラデシュからの女性海外出稼ぎ労働者ー出国前研修生へのアンケート調査からー」と題して、近年急増する女性出稼ぎ労働者の社会的背景や女性を取り巻く労働環境の変化について報告し、貧困からの脱出と先進諸国の労働力市場との関係について指摘した。 代表者の井上貴子は、主にアルバイト作業員と共に専用のホームページを開設作業を行った。URLは以下の通りhttp://www.ic.daito.ac.jp/~itakako/
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、2019年度は年4回の研究会を実施することができた。2018年度は、分担者全員が現地調査を実施して資料を収集し、現地調査の経過報告を行った。また、代表者の井上貴子は収集資料の分析に基づく報告に加えて、研究目的の中心である「包摂と排除」から「共棲」へという理論的視点の概念整理を行った。これによって理論的視点を共有し、それをふまえて2019年度は、分担者が現地調査で収集した資料を分析し、個別の詳細な報告を行った。また、研究会には、2020年度より分担者となった鈴木真弥、学内の東洋研究所研究会のメンバーである小尾淳、2名の日本学術振興会特別研究員など、代表者と分担者以外の若手研究者も加わり、十分な時間をかけて報告と議論を行い、問題点を指摘しあい、分担者全員が研究成果を共有することができた。 代表者と分担者は、以上の研究会で得た知見を基に、資料の不足などを補完し、さらに問題を追及するために、他の研究費等を利用しながら追加の現地調査を実施した。2019年度に行われた追加の現地調査をふまえ、2020年度に各自がさらに深く資料の分析に取り組むことを確認した。 また、「南アジア共棲科研」専用のホームページを開設し、代表者及び分担者の研究の進捗状況を随時公開すると共に、各分担者がこれまで研究してきた成果のうち、ウェブ上で公開可能な論文や研究報告書、資料などをアップロードし、研究成果を広く社会に還元できるようにした。 以上、4回の研究会を通じて得た知見から、近年の南アジアでは、ダリト、ムスリム、女性といった社会的経済的に抑圧されてきた人々が、自ら進んで貧困からの脱出や更なる社会進出をめざして声を上げ、一定の成果を挙げていることが把握できた。しかし、南アジアの多様なコミュニティ間の対立が、マイノリティの社会進出によって一層深まるという現状への取組は、今後検討すべき課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は本研究プロジェクトの最終年度にあたるため、これまでの2年間の研究成果のまとめと社会への還元が中心となる。具体的には、学会等で研究成果を発表し、最終的には英文による成果報告書をまとめる予定である。 10月に開催される第33回日本南アジア学会全国大会のパネルセッションで、井上貴子・石田英明・鈴木真弥が『インドにおけるマイノリティの生存戦略―「ゆるやかな共棲」に向けて―』と題するパネルを行う予定である。パネルはすでに採択されている。 研究会は、4回開催する予定である。第1回研究会は7月に開催することが決定しており、日本南アジア学会のパネルのための準備研究会とする。第2回研究会は、10月の日本南アジア学会のパネルセッションをもって代替する。第3回研究会は12月を予定している。主に成果報告書の作成について話し合う。第4回研究会は2021年2月を予定している。主に成果報告書の編集作業と本研究プロジェクトの総括を行う。 成果報告書の刊行は、以下のような日程で進行する予定である。11月中に個別論文を提出、12月中に英文校正を行い、2021年1月~2月に編集・印刷を行い、2月末日までに刊行する。成果報告書の構成は、以下のとおりである。なお、タイトルは仮題(英文の予定)である。序章「包摂と排除から共棲へ」(井上貴子)、第1章「インドにおける牧畜カーストの挑戦」(篠田隆)、第2章「タミルナードゥ州におけるパライヤルの宗教・政治・文化活動―太鼓パライは誰のものか―」(井上貴子)、第3章「インドのダリト運動にみる権利意識と生存戦略」(鈴木真弥)、第4章「現代ヒンディー文学のムスリム作家が描くムスリム像」(石田英明)、第5章「増加するバングラデシュからの女性海外出稼ぎ労働者」、終章「今後の課題」。
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Causes of Carryover |
一部の分担者が、2019年度中に分担金全額を使用しなかったため、翌年度へ繰り越しすることとした。 繰り越された額は、2020年度の図書資料購入費として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)