2018 Fiscal Year Research-status Report
グローバル映画流通網におけるアジアと日本の市場比較:配給を中心に
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18K11831
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
笹川 慶子 関西大学, 文学部, 教授 (30339642)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 映画流通 / 映画産業 / 日本 / アジア / 日英映画交流 / 吉澤商店 / アメリカ / 香港 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、19世紀末から20世紀初頭の日本の映画市場および配給システムを明らかにし、それを欧米やアジアの都市と比較することで、グローバル映画配給網のなかに日本の市場および配給を位置づけ、その特徴を歴史的に捉えることになる。そのため2018年度は日本の映画市場および配給システムはどのように形成され、変容したかを研究した。 まず日本の映画市場および配給に関する先行研究を調べ、歴史的にどのように理解されてきたのかを整理した。具体的にはまず、東京の事例を明らかにすべく、東京で発行された日本映画配給に関する戦前の研究文献や雑誌記事を洗い出す一方、政府刊行物や新聞、事業総覧、映画会社社史などを調査した。その成果は「日英映画交流史――吉澤商店を事例として」にまとめ、中国で開催された国際シンポジウムで口頭発表した。予稿集掲載の同名論文は来年度、台湾の学会誌および中国の書籍に掲載される予定である。 また、来年度以降の前準備として、香港の映画市場および配給について調査分析した。成果は論文「パテ社とアジア映画供給網の形成――香港を事例として」にまとめるとともに、香港城市大学で開催された東アジア文化交渉学会第10回国際学術大会で口頭発表を行った。さらに今後の研究課題を明確にするため、これまで蓄積してきた資料や情報を整理し、20世紀初頭の日本を含むアジア映画市場の形成史を著書『近代アジアの映画産業』の第三部「近代アジアにおける欧米日の興亡」にまとめた。 加えて日本映画市場形成とテクノロジーの関係を考察するため、サウンド化前後の日本映画産業を調査分析した。その成果はカリフォルニア大学ロサンゼルス校で開催されたシンポジウムで「活弁LOVE――ネオスーパー・トーキーと日本映画産業」として口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は日本の東京と大阪の調査を予定していたが、実際には東京のみの調査となった。その点で計画より少し遅れている。 一方、アジア市場の調査に関しては2021年度に予定しているが、前倒しで準備することができた。とりわけ香港については現地調査前に日本 で手に入る資料をもとに研究をまとめることができた。その点では計画より少し進展している。総合しておおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は2018年度に引き続き、草創期の日本の映画市場および配給システムを明らかにするため、日本国内の資料に加えて海外の資料も調査し、国内外の両面から日本企業の活動を明らかにする。よって2019年度は計画通りイギリスとアメリカで調査をおこなう。また、2018年度は吉澤商店についてのみ調査したが、2019年度は同じ方法で吉澤のライバル会社である福宝堂についても調査を進める。なお大阪に関する調査は東京の調査をまとめてから着手する予定である。
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Causes of Carryover |
2018年12月に中国で、2019年3月にアメリカのUCLAで開催されたシンポジウムで発表の機会をえた。シンポジウム終了後、滞在を延長して、それぞれ厦門大学やUCLAなどで科学研究費の研究課題について現地調査をおこなった(アメリカの渡航費とシンポジウム期間中の滞在費はUCLAの支払い)。滞在費は2018年度に購入を予定していたスキャナーをより低機能なものに変え、パソコンを2019年度に購入するよう変更し捻出した。現地での調査結果を整理分析したあと、必要に応じて2019年度に予定しているアメリカ調査の日程を調整する。
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Research Products
(7 results)