2020 Fiscal Year Research-status Report
仏領ニューカレドニア日本人移民史-写真の表象分析による実態解明とアーカイブ構築
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18K11832
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
津田 睦美 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (70351236)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 仏領ニューカレドニア / 出稼ぎ移民 / 写真アーカイブ / 写真の表象 / 移民会社 / 天草 / ニッケル鉱山 / オセアニア |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年3月、コロナ蔓延のために断念した米国国立公文書館(NARA)での調査は、4月以降も実現しなかった。他に予定していた新たな写真の収集・調査、フィールドワークなどの現地調査もできない状態が続いた。国内も同様で、調査や研究会のために出張することができず、コロナの状況が好転することを期待して本研究の期間を1年延長した。 出張はできなかったが、これまで本研究のために蓄えた史料と近隣の図書館などで得た資料をもとに、勤務校の紀要にリサーチノート「仏領ニューカレドニア初回出稼ぎ移民再考」(1)、(2)を寄稿した。(1)は、日本吉佐移民会社の下請け移民会社の成り立ち、特に天草での移民募集の実態をまとめ、(2)は、ニューカレドニア政府公文書館、個人が所蔵する初回移民に関する写真を取り上げ、その写真の表象研究を行った。また、オンライン開催(12月20日)となった第5回日本移民学会冬季大会では、「仏領ニューカレドニア、熊本からの初回出稼ぎ移民-新たな史料を中心に-」という題目で研究を発表した。 いずれも、明治25年(1892)の初回ニューカレドニア出稼ぎ移民の研究において、先行研究では不十分だった黎明期の移民会社の実態や募集の方法を、今までに利用されてこなかった新史料をもとにまとめたものである。 他に、地域研究に関する科研費を受給している研究を対象とする、国立民族博物館「地域研究画像デジタルライブラリ写真コレクション(DiPLAS)」の助成が得られることになり、本研究と関連する、津田が2003年より収集してきた移民の遺族が所蔵する写真のコレクション約700枚をデジタルアーカイブ化するプロジェクトが進行中である。コロナ下で思うように調査ができない中、予定外にできた時間的余裕が、本研究と相互関係のあるもう一つのアーカイブを誕生させることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の対象となる写真コレクションは、①ニューカレドニア政府公文書館所蔵、②フランスの国立海外文書館、③米国国立公文書館所蔵、④個人コレクター蔵、に大きく分類される。現在、③以外はほぼ収集を終えている。③は、[研究実績の概要]で述べたように未だ調査をすすめられていないため、コロナの状況が好転しない場合は第三者に発注して調査をすることを検討したい。 本写真アーカイブは、ニューカレドニア政府公文書館で公開する計画として進めてきたが、未だに政府から正式回答を得られていない。再三問い合わせてきたが、2018年の独立にまつわる国民投票後の混乱や政権移行などで政情不安定であること、さらにコロナ蔓延という世界的課題がのしかかっていることが原因だと考えている。研究終了までに正式回答が得られない場合は、別の方法での公開を考えたい。 アーカイブ構築については、デザイン、仕組みについて専門家と意見交換をし、これから実際に作成していく下準備をした。
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Strategy for Future Research Activity |
1年研究機関を延長した最終年にあたる本研究は、写真のアーカイブを完成させるという当初の目的を達成することを目指す。すでに述べたように、本写真アーカイブの公開は、未だにニューカレドニア政府から正式回答を得られていない。しかし、2021年が真珠湾攻撃80周年でヌメア市が日本人移民史を紹介する展示を計画していること、日本人移民をテーマにしたフランスのドキュメンタリー番組が公開されること、2022年はニューカレドニア移民130年だということもあり、このタイムリーな機会にアーカイブを正式公開できることを目標としたい。 具体的には、夏休み明けにはアーカイブの雛形を完成させ、その後、国内外のアーカイブの専門家の意見を聞きながら、利用しやすく、著作権や肖像権を守れるアーカイブを構築する。また、個々の写真を表象分析を仕上げ、フランス語(さらに英語)に翻訳する。本アーカイブを、ニューカレドニア日本人移民史の新たな研究ツールとして国内外の研究会などで発表する。また、公開にともない、関連した展示会を2022年にニューカレドニア政府公文書館で開き、周知とさらに新たな写真や史料が遺族やコレクターから収集できるような機会を設けたい。できれば、アーカイブだけでなく、出版物、あるいは短い動画としてまとめることで、インターネットに慣れない地域や世代の人にも情報を提供できるようにしたいと考えている。 今後、ニューカレドニアに出張し、現地で研究推進のための研究会を開いたり、調査を継続して行える日が来るかわからないが、どちらになってもそれなりの成果があがるよう善処する。また、DiPLASの助成を得たアーカイブも同時期に公開できるようにしたいと思う。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた出張ができず旅費が残っている。2021年度にはそれを利用して調査をするとともに、アーカイブ構築、翻訳料に当てる予定である。
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Research Products
(3 results)