2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K11834
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
岡 奈津子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター ガバナンス研究グループ, 研究グループ長 (80450493)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非公式な支払い / 市場経済化 / 腐敗 / 教育 / 医療 / カザフスタン |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、カザフスタンの教育分野と医療分野における非公式な交換について、それぞれ査読付き英文学術雑誌に論文を発表した(論文タイトル“Grades and Degrees for Sale: Understanding Informal Exchanges in Kazakhstan’s Education Sector”および“Changing Perceptions of Informal Payments under Privatization of Health Care: The Case of Kazakhstan”)。 教育分野をとりあげた論文では、市場経済化後に非公式な交換の「金銭化」が進行し、試験の点数、成績、学位論文等が売買されていることに加え、コネ利用のあり方も変化したことを指摘した。具体的には、親族間の互酬的な交換に伴う精神的な「負債」を避けるため、それが可能な場合には必ずしも親族に頼らず、金銭で解決する方法が選好されている。同時に、教育機関における非公式な支払いは、教育行政内部に蔓延する垂直的な腐敗(賄賂の分配・上納および公職売買)の一部を構成していることを明らかにした。 旧社会主義国の医療分野を対象とした先行研究では、非公式な支払いの定義、なかでも「謝礼」と「賄賂」をいかに区別するのかについての議論が盛んになされてきた。これに対して本研究は、医療分野で進行する民営化が人々の認識に与えた影響に着目した。有償サービスの導入により、質の高い治療に対する非公式な支払いもしばしば「サービスに対する正当な対価」と見なされ、公式・非公式の区別があいまいになっている一方で、そのような支払いと医療者による強請の違いが、患者及びその家族によって強く意識されているのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英文の査読付き学術雑誌に論文2点を発表した。そのうち教育分野の不正に関する論文は、中央アジア地域を対象とする複数のインターネット・メディアで紹介された。また和文単著の出版社が決定し、刊行に向けた準備を行なっている。これと並行して、インタビュー・データの分析も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、6月27~28日に英国エクセターで開催される欧州中央アジア研究学会(European Society for Central Asian Studies)で研究発表を行う(発表タイトル “Informal Exchange after Communism: The Case of Kazakhstan”)。また、一般向けの単著(仮題『賄賂のある暮らし――市場経済化後のカザフスタン』)の刊行を2019年10月に予定しているため、出版に向けた準備を行う。さらに2019年度後半には、英文単著(仮題 Power and Everyday Influence in Kazakhstan: Informal Exchange after Communism、出版社はBloomsbury Publishingを予定)の原稿執筆を開始し、2021年3月までの草稿脱稿を目指す。なお、それまでにカザフスタンでフォローアップ調査を実施する。
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Causes of Carryover |
過去に実施済みのインタビューのテープ起こしとその分析を行なったところ、ある程度十分な量の質的データが集まっていることが判明したため、論文等の執筆作業を優先し、2018年度に予定していた現地調査を延期した。2019年度は、出版スケジュールの関係上、主に和文単著の出版準備と英文単著の執筆作業に宛て、現地調査は2020年度に実施する。
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Remarks |
(1)フェルガナ・ニュース、2018年12月21日掲載。 (2)ラジオ・アザットゥク、2019年1月23日掲載。
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