2018 Fiscal Year Research-status Report
アクターネットワーク理論を用いた名古屋大都市圏の観光農園の展開過程に関する研究
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18K11839
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
林 琢也 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (50572137)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 観光農園 / 名古屋大都市圏 / ブドウ狩り / 集客圏 / 五者会議 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018(平成30)年度は,主に名古屋市と岐阜市を事例に現地調査を進めた。名古屋市では,守山区上志段見の「東谷山ぶどう狩り組合」への聞き取りをおこなった。個々の農園の経営規模や栽培品種,労働力,ブドウ狩りに訪れる観光客の居住地や入園者数,直売や宅配も含めた販売方法や販路について把握するとともに,ブドウ狩り開始時(昭和40年)から現在に至るまでの取り組みについて話を伺った。また,愛知・岐阜両県のブドウ狩りをおこなう5地域で実施していた五者会議についても価格設定やポスターに関する協議を定期的に行っていたこと等,昭和40~50年代の名古屋大都市圏内の各ブドウ産地の連携・協力体制について具体的な情報を収集することができた。同様に岐阜市においても長良地区のブドウ生産者を対象に経営の近況に加え,五者会議を中心としたブドウ狩り黎明期から最盛期の他産地との関わりについて聞き取りを行った。この点は,本研究の目的である関係論的視点から大都市圏内各地に成立・普及していった観光農園の展開過程を明らかにする上で重要な成果であると考える。 また,自治体史の分析については,市町村誌のみならず,開拓誌等の記述にも注目し,当時の状況把握に努めた。例えば,今年度に調査をおこなった名古屋市守山区のブドウ園は戦後開拓地であったため,『愛知県開拓史』などを参照することで,ブドウ狩りの始まった昭和40年前後の状況を把握することが可能となり,聞き取りの内容を補足することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,現地調査(関係者への聞き取り)を行うとともに,資料・データの収集に努めた。聞き取り調査と資料の整理・分析が中心で,学会発表や論文等を通した成果の発信は十分にできなかったが,大都市圏内の観光農園の全体像を捉えるとともに,複数のブドウ産地の関わり(連携)やその歩みを理解することで,1年目に調査した地域以外のブドウ産地も加えた調査をおこなう2年目(2019年度)に繋がる研究になったと考える。このため,本研究の目的や趣旨を鑑みれば,ここまでの研究の進捗はほぼ当初の目的に沿ったものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書の計画通り,2年目は1年目に調査をおこなった名古屋市守山区・岐阜市に加え,愛知県岡崎市や大府市のブドウ狩りを実施する観光農園への聞き取りを行うことで,産地内部の状況と大都市圏内の他地域・生産者との関係性を調査する。それにより,観光農園という経営形態が名古屋大都市圏の中でどのように展開していったのかを動態的に把握する予定である。また,それと並行して,東海3県の市町村誌(史)および新聞・雑誌記事の分析から各時期の特徴や活動を補足したい。
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Causes of Carryover |
(理由):今年度の調査および資料収集を完了させた時点で,若干の残額が生じた。1年目の調査を踏まえ,2年目は調査対象地域が増えるため,次年度の使用額に充てるのが適当であると判断した。 (使用計画):対象地域での調査旅費および資料収集にかかる費用として使用する。
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