2019 Fiscal Year Research-status Report
アクターネットワーク理論を用いた名古屋大都市圏の観光農園の展開過程に関する研究
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18K11839
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林 琢也 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (50572137)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 観光農園 / ブドウ狩り / 集客圏 / 五者会議 / 市街化区域 / 栽培環境の変化 / ネットワーク / 布置連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,2019年9月から2020年2月にかけて,愛知県大府市・東浦町,名古屋市守山区,岐阜市において現地調査を実施した。大府市では,「大府長根山観光ぶどう組合」所属の農家および事業の一環として観光農園を経営する農業生産法人に対し,聞き取りをおこなった。各農園の規模や栽培品目・品種,栽培技術,販売方法,労働力,営農環境(市街化区域内農地や税制,周囲の住民との関係,気温や降水量の変化),ブドウ狩りの開始から現在に至るまでの歴史や取り組み内容の変遷について話を伺った。また,観光客の居住地や入園者数の推移,団体客の出発地や贈答用の宅配先に関するデータを入手するとともに,近隣のブドウ狩りを行う産地(生産者)との繋がりや連携についても調査した。同様に,名古屋市守山区・岐阜市長良地区では,昨年度に引き続き,ブドウ狩りや直売をおこなう農家へのインタビューをおこない,各農家の経営や宣伝方法,気候とブドウの品質・収量のかかわり,顧客の居住地・集客圏,栽培技術の習得・更新の方法,域内外の農家や関係機関との連携体制の変遷について調査した。その他に,JAぎふ長良支店において,販売事業およびブドウ生産者への支援体制の現状について話を伺った。さらに,名古屋大都市圏内の各市町村の農村レクリエーションについての動向を経年的に理解するため,愛知県図書館・岐阜県図書館において昭和30~40年代から現在に至るまでの観光農業に関する活動・取り組みを紹介した新聞記事を収集した。 この2年間の調査で上記3地域の状況は,おおよそ把握することができた。他方,名古屋大都市圏(あるいは,より広範に東海地方)というスケールのなかで観光農園の展開過程やアクター間の相互作用を捉えるためには,より多くの調査事例を蓄積するとともに,各産地の関係・繋がりについて多角的に理解することが必要である。この点は次年度に補足していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,精力的に現地調査(関係者への聞き取り)を実施するとともに,地域資料・文献の収集に努めた。その結果,来年度以降に学会発表や論文執筆といった形で成果を公表できる状況が整ったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年となる3年目(2020年度)は1~2年目に調査をおこなった名古屋市守山区,大府市・東浦町,岐阜市に加え,岡崎市など,これまで中心的に調査をおこなってきた地域よりも相対的に名古屋市から離れた地域の観光農園を対象に調査を行うことで,名古屋大都市圏の中で相互に影響を与え合うなかで観光農園がどのように展開していったのかを整理し,まとめる予定である。また,その際には,既往研究の整理や方法論の精緻化を図り,観光農園を経営する生産者や組織,行政や農業団体,都市住民や観光客といった人間のみならず,制度や技術,品種,気候,営農環境といった,非人間的なモノを含むハイブリッドなアクターの相互作用を整理し,描出することに注力したい。
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